鹿児島県・トカラ列島近海を震源とする地震が収まる気配をみせない。6月30日には悪石島で震度5弱の強い揺れを観測した。その悪石島に鹿児島テレビのカメラが入った。住民はいつ起きるか分からない地震に疲れ切った様子で、不安を口にしていた。
6月21日から続く地震 震度1以上の揺れ770回超える
トカラ列島近海を震源とする震度1以上の地震は6月21日から相次ぎ、23日に183回を観測、その後いったん減少したが再び増加傾向にあり、悪石島で震度5弱を観測した30日は62回、7月1日は午後5時までに82回を観測し一連の地震の回数はここまでの合計で773回となった。

震度5弱の地震から一夜明けた7月1日。取材班は悪石島に入った。鹿児島市からヘリコプターで約1時間半。上空から地震の爪痕は確認できず、島が属する十島村役場などにもここまでに被害の報告はない。

「経験のない揺れ。本当に早く終わってほしい」本音語る住民
悪石島には5月末時点で43世帯89人が住む。取材班は、島に2つある集落のうちの1つ、上(うえ)集落に、これまで何度も電話取材に協力してくれている有川和則さん(73)をたずねた。
ここで民宿を経営する有川さん、前日の震度5弱の地震について「経験がない揺れ。下から突き上げてきて横揺れから振り回される感じ。長くても12秒くらいかな」と振り返った。

連日の地震で「きのうぐらいから睡眠不足。体がだるくてちょっとした揺れでも目が覚める」状態だという。「皆さん全員が地震の話で始まり地震の話で終わる。みんな『睡眠不足』『疲れた』『早く収まってほしい』それだけです」10日以上続く今回の一連の地震で疲れ切った様子の有川さん、「いつ終わるのか分からないけれど、本当に早く終わってほしい」と切実な思いを口にした。
「けが人出たら」「急患の手当は」医療関係者も不安
医療従事者も今回の地震に不安を抱えている。悪石島へき地診療所。この日島内にいた唯一の医療従事者、看護師の渡部涼さんに話を聞くことができた。

島民の様子について「地震の揺れだったり、震度4以上だと放送が流れるので眠れないという人が多い」と話す。悪石島には常駐する医師がいない。「大きい地震が来ると、避難の方法や、けが人が出たとき、医者が常駐していない中で、急患の手当も診療所の看護師だけでは対応できないところもある。そこは村の消防団とも協力してやっていくことになる。地震を想定して訓練はしているが、実際に起きたらどうなるんだろうという不安はある」と話した。
村役場では現地の戸別訪問を検討
相次ぐ地震に住民たちが不安を抱える中、村でも地震を想定して協議している。十島村・久保源一郎村長は取材に対し「村民のケアという形で職員を派遣できないか協議している。いつになるかは分からないが現状では、調査という部分で直接的に住民の声を聞き、いわば戸別訪問になると思うが、そのようなことを今協議して考えている」と答えた。

トカラ列島近海では7月2日午前4時32分ごろにも悪石島で震度5弱の揺れを観測する地震が発生した。気象台は当分の間、最大震度5弱程度の揺れに注意を呼びかけているほか、落石や崖崩れなどが起こりやすくなっている可能性があるとしている。住民の不安と緊張の日々が続く。
(鹿児島テレビ)