警視庁が“匿名流動型犯罪グループ=トクリュウ”と認定した、風俗スカウトグループ「アクセス」。警視庁生活安全部が16年ぶりに特別捜査本部を設置し、これまでに12人を逮捕した。
SNSで女性をスカウト・全国の風俗店に紹介
「アクセス」のビジネスモデルはこうだ。
ホストクラブやメンズ地下アイドルのために金が必要な女性をSNSでスカウトし、全国1800の風俗店に紹介して売春させ、風俗店から“紹介料”として「スカウトバック」と呼ばれる金を集める、というもの。(この「スカウトバック」は、6月28日に施行される改正風俗営業法で禁止されることになる)

警視庁は26日、リーダーの遠藤和真容疑者(34)をスカウトバックで得た1億2000万円の犯罪収益を隠匿した疑いで再逮捕した。「特別捜査本部」としての検挙はこれが最後となり、一連の実態解明は完結する見通し。

事件を指揮した警視庁・半田正浩保安課長がFNNの単独インタビューに応じ、アクセスの実態を明らかにした。
捜査幹部も衝撃「風俗嬢は人ではない」「女性の稼ぎは永遠に入る」
今回の取材で、アクセスの「スカウト」についてのマニュアルの詳細が判明した。
「風俗嬢は人ではない」
「一般常識のかけらもない」
「(スカウトの)給料システムは完全歩合で、女性の稼ぎは永遠に(スカウト)に入る」
まさに、女性を搾取するビジネスだということを表す言葉だ。
このマニュアルに、半田課長は「衝撃を覚えた」と話す。

警視庁・半田正浩保安課長:
結論から言うと彼らはやはり、女性は商品としか見ていないということがマニュアルでも明らかになっているなと思っています。多分勧誘する時には女性に甘い言葉を言いながらそそのかしていたと思うんですが、裏では女性を、商品としてみていたということが実態としてあったことに衝撃を受けました。
「身長―体重」で女性を“ランク付け”
さらにアクセスでは、女性を「ランク」付けし、オークション形式で風俗店に紹介していたという。

警視庁・半田正浩保安課長:
(風俗店に)紹介する女性の基準が、「身長―体重」みたいなことを1つの基準にして、さらには入れ墨が入っていないか、外形、外姿をそれぞれ数値化していまして、それによって紹介する店舗の対象・基準を決めるということがマニュアル化されていました。
そのデータについては登録するスカウトグループは誰でも見られる状況になっていて、自分の得意とする営業店に紹介するというシステムになっていました。
時代遅れにも女性の容姿を数値化して格付けし、“ランクの高い”女性を利益率の高い店に紹介する、というシステムで荒稼ぎしていたという。
そもそもなぜ、アクセスは全国の風俗店から金を取れるほど大規模化したのだろうか。
路上スカウトからSNSスカウトへ 徹底した“社内”競争で拡大
――アクセスがこれまでのスカウトグループと異なっていた点は
警視庁・半田正浩保安課長:
これまでやってきたシステムは通常であれば、路上で歩いている女性に声をかけて、勧誘するということがこれまでのシステムでしたが、このスカウトグループ「アクセス」のやり方はあくまでもSNSを活用しての女性たちを勧誘するシステムを構築していた。

――何故ここまでの大規模グループが誕生したか
警視庁・半田正浩保安課長:
当初、このアクセスについては数十名の規模の小さなスカウトグループでした。ところが5年前に首魁である遠藤(和真)容疑者がリーダーに推挙されてからどんどん組織が拡大した。
理由のひとつに、スカウト、リクルーター制度の運用だと思っています。 スカウトについてはスカウトを行う人間をリクルーターが探してきて、リクルーターが探してきたスカウトが実績を上げれば、リクルーターの収益にあがるということでいわゆる“ネズミ講”的なシステムを構築したことが大きな点。
さらには、アクセスでは3つのチームに分かれてそれぞれ競わせて、収益の上がった組織を公表し、競わせてボーナスなどを与える、ということが組織拡大の大きな柱だった。
まるでブラック企業?「上司の連絡には最速で返信」「社内ビジョンは“日本一”」
徹底した競争意識で、スカウトたちに営業をさせていた遠藤容疑者。マニュアルには、スカウト営業のための“精神論”も書かれていた。
「まず初めに楽して稼ぎたい人はこれ以上読み進まなくて結構です。」
「弊社は初期費用もなしで月収100~1000万円は可能です。月収100万は正直普通です。」
「しかし稼ぐまで非常に大変です。中途半端な覚悟では稼げないと思ってください」

さらに、「スカウトのマインド」として明記されている言葉からは“ブラック企業体質”もうかがえる。
「上司の連絡には最速で返信」
「明日からやるは論外、今日ですら遅すぎる、ライバルは昨日済ませている」
「プライベートの時間をどれだけ仕事に割けるかで稼ぎが決まる」
半田保安課長は、これらの仕事論について次のように指摘する。
警視庁・半田正浩保安課長:
企業という認識を持っているなというのが伺い知れるのが、マニュアルの中では社内ビジョンということを謳い文句に、『自社の社内ビジョンは業界、日本一の会社です』ということで始まり、『社内全員で同じビジョンを共有しぶれることなく、向かっていかないと、絶対に達成はできません。自社はたった3年間で都内で3本の指に入る会社の規模になり、大手グループでも認められてもらっている会社まで成長できました。(略)今のペースで行くと確実に数年以内には日本一の会社になります』ということを言っていますので、遠藤の気持ちとしては自分で立ち上げたアクセスというグループを日本一のスカウトグループにするという意気込みがあったと思う。
法改正でスカウトバック禁止も…巧妙化する手口
巨大トクリュウグループ「アクセス」を検挙し実態解明したが、今後も同様の、あるいはさらに巧妙化した手口のグループも出てくると半田課長は話す。

警視庁・半田正浩保安課長:
今回の事件を通じて全国に展開するソープランドも摘発したわけですが、その捜索の過程の中でアクセスと違うグループが存在することは警察としては認知している。
今回の改正風営法を適用するに当たって、スカウトバックも禁止され、今回の改正も警察としての武器をいただいたので、そういう面からも徹底した摘発をしていきたいと思っています。
一方今回の改正風営法によってより巧妙化、潜在化することは懸念されますので、我々警察としても知見を生かして今回の捜査ノウハウを生かしながら、徹底した摘発をしていきたいと考えています。
【取材・執筆=北山茉由 大熊悠斗】