秋田県羽後町にある宿泊できる文化交流施設でいま、西馬音内盆踊りをテーマにしたアート作品の制作が行われています。作品を手がける絵本作家の思いなどをお伝えします。

羽後町西馬音内にある泊まれる文化交流施設「盆宿U」。林業に盛んに取り組んでいた旧柴与家の築180年以上にもなる母屋や蔵をリノベーションし、2025年4月にオープンしました。町の伝統行事でユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録されている「風流踊」の一つ「西馬音内の盆踊」を広く知ってもらおうという狙いがあります。

施設では6月17日から西馬音内盆踊りをテーマにした大型アート作品作りが始まりました。利用客に盆踊りの雰囲気や思いを感じてもらうためです。

制作するのは、秋田・横手市出身の絵画作家・永沢碧衣さん(30)。公開で作品作りを進めます。

制作初日のこの日はキャンバス作り。真っ白なキャンバスにベースの色を塗っていきます。

絵画作家・永沢碧衣さん:
「濃い藍色の深い夜の暗さを一面に塗ったあとに、どんどん光を入れていくイメージで、『ハレ』と『ケ』という二重の踊り方や気持ち、精神性を表すちょっとしたシルエットを描き込んでいこうと思っている」

横手市山内で生まれ育った永沢さんは、秋田市の秋田公立美術大学で絵画を学び、現在は地元の横手市山内と北秋田市阿仁を拠点に活動しています。

秋田で暮らしながら出会った動物や景色をモチーフに、人の生活や思いも織り交ぜて描くのが永沢さんの作風です。作品は県内だけでなく、東京や神奈川の美術展などにも出展しています。

今回制作するのは横3.6メートル、縦3メートルの大型作品です。

永沢さんが1人で制作するのではなく、地域の人や訪れた人に話を聞いたり簡単な作業をお願いしたりして作品作りを進めていきます。

この日も地元で呉服屋を営む住民から話を聞きながら作品の着想を得ていました。

絵画作家・永沢碧衣さん:
「盆踊りや街並み。人間1人の力で生まれたわけではないので、作品も同じように私1人の力だけではなく、街を通るいろんな人や新しい拠点ができたことで訪ねてきてくれた街の外の人にも協力してもらい、昔の伝統や今の街の良さが融合した作品作りが目指せたら良いと思う」

ほかにも作品の素材として活用するために、浴衣や着物、藍染めの端切れを集め、キャンバスに縫い込んでいきます。

作品のベースに青色を選んだ永沢さん。自身の名前にも“碧”の字があり、好きな色だと話します。

絵画作家・永沢碧衣さん:
「亡くなった人や人間以外の魂、まだ自分たちが知覚していないものたちへ届けようとする盆踊りの一夜にとっては、より特別な意味合いを持つ色だと思うので、そういったところを絡めながら、青色も研究しながら描いていければと思っている」

作品の外側にはこれまで紡がれてきた西馬音内盆踊りの伝統や歴史を描き、中央に描く今や未来に融合させていく構想で、訪れた人との交流を大切に地域とともに作品を作り上げていきます。

絵画作家・永沢碧衣さん:
「ここにしかないような華のある奥深さのある踊りだと思っているので、それを今や未来につなぐ箱舟のような装置として、人々の思いを紡いでいけるような媒体になっていければと思っている」

制作は始まったばかり。完成した作品は8月3日に一般公開が始まる予定です。

秋田テレビ
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