フジ・メディア・ホールディングスの株主総会について、中央大学法科大学院教授の野村修也さんとみていきます。
まず今回の株主総会で注目された取締役候補の選任について詳しく見ていきます。
フジ・メディア・ホールディングス側が出した取締役候補11人は全て過半数賛成で選ばれました。
一方、ダルトン側が出した12人の候補は全員、過半数が集まらなかったために選ばれませんでした。
青井実キャスター:
野村さん、まずこの結果どう見ますか?
中央大学法科大学院 野村修也教授:
株主総会というのは出席している人だけではなく、欠席している人たちも多く投票しているわけなんですよね。事前に議決権行使書という形で投票が行われますけども、その場合、大概会社の提案に賛成する人が多いんですね。ですから、一般的に会社提案が通るのが株主総会の実情ということが言えると思います。
青井実キャスター:
一方でダルトン側の提案は全て否決されましたが、なぜこうした結果になったのか見ていきます。
まず、大株主であるアメリカの投資ファンド、ダルトン・インベストメンツは外部からの経営陣などを招へいするなどし、ガバナンス改革を行うと主張していました。
そして、不動産事業については「分離すべき」と、会社側とは異なる主張を展開してきたわけです。
このダルトンについて、上場企業のアクティビスト対策に詳しい鈴木賢一郎さんにお話を伺いました。
ダルトンというのはアクティビスト、つまり“物言う株主”とも言われていますが、ダルトンは企業価値を上げて株を高く売ることが目的で、経営改善を要求しているけれども会社の中身やガバナンスをよくするなどはあくまで手段。
ダルトンにとっての今回の不祥事というのは会社を責める好材料ということで、「自分たちの主張が通りやすくなる」といった捉え方を鈴木さんは指摘しています。
そして、今回ダルトン側の取締役案が否決されたことに関しても話を聞きました。
株主は、数パーセントしか株を所有していないダルトンに好きなように経営されるのを嫌がったのではないかと分析しています。
宮司愛海キャスター:
鈴木さんはこのような指摘ですが、野村さんはこの点、どのようにご覧になっていますか?
中央大学法科大学院 野村修也教授:
株主には、大きく分けると短期的に株価が上がることを求めている株主と、長期にわたって、会社が成長していくことを求めている株主がいるわけですね。ここに実は食い違いがあるわけです。ダルトンのような会社はどちらかというと、例えば不動産を売った代金をすぐに配当に回して、そうすると一瞬株価が上がります。その瞬間に株を売ってしまうという傾向があるわけですが、これは残された株主から見ると、将来をいわば売られてしまったという感じになるわけですね。ですからこういう観点から見ると、株主から支援を受けようとしている取締役よりは、むしろ長期にわたって改革をしていくと見えたフジテレビ側のほうの提案が支持されたということになるんだと思います。
青井実キャスター:
そういった株主からの声ですが、ダルトン側の主張に対して「フジテレビのコンプライアンスやガバナンス問題の改革につながると期待していた」、「全く別の新たな道を示してもらえると思い賛同した」という評価する声も聞かれているわけですが、ダルトンはどういう対応をしていくと思いますか?
SPキャスター パトリック・ハーラン氏:
この先、さまざまな選択肢があると思いますよ。全ての株を売却して縁を切ることもできますし、今後もうるさく物を言い続けることもできると思うんです。でも、あんなに素晴らしい面々をそろえるのは並大抵の努力じゃないと思うんですよ。1人も入らなかったのは結構ショックだと思います。恐らく、この先はしばらく見守る形だと思うんですが、やっぱり、フジテレビの改革案が1回可決されたんですけど、しっかり実行されないとまた立ち上がって代替案を出すと思うんです。いい意味の監視役があって、この先はフジテレビに緊張感をもたらしてくれると思いますよ。
青井実キャスター:
野村さんはダルトン側の今後はどう動いていくと思われますか?
中央大学法科大学院 野村修也教授:
これからのビジネスに対しては、厳しい目線で求めている部分があると思います。株主にとってみれば長期も短期も含めて、企業価値が向上していくことはみんなが求めていることなんです。そういう中で、例えば不動産を今どういうふうに生かしていくのかということについて明確な方針を示していかないと、ダルトンのほうの主張がちゃんとした回答を得ていないという形になってくる可能性があると思うんですね。そのほか、改革を行っているように見えても形だけのガバナンス体制になってしまうのは大変まずいですから、本物のガバナンス改革ができるかどうかをみんなが見ていくことになるんじゃないかなと思います。
青井実キャスター:
フジテレビとしての今後、どういうところに注目していきますか?
SPキャスター パトリック・ハーラン氏:
道半ばだった分だけ、今回は期待も含まれた投票結果になっていると思います。ですから、清水社長に対する評価も高いんですけど、新チームが果たしてプレーができるかどうかもみんな注目していると思います。我々出演者もスタッフもみんなそうなんですけど、視聴者も、生まれ変わってもっと面白くなってくれるかどうか、みんな注目していると思います。