沼津市でトラックを運転中、地域のゴミ当番だった親子2人をひき逃げで死亡させた罪に問われている高齢の男の裁判で、男は証言を二転三転させる一方、改めて「風が強く音も聞こえなかったのでぶつかったかどうかはわからなかった」などと主張した。
過失運転致死と道路交通法違反の罪で起訴されているのは沼津市に住む鮮魚販売業の男(87)で、2024年1月、沼津市の県道で地域のゴミ当番だった親子にトラックの荷台の扉を衝突させ、2人を死亡させたにもかかわらず、救護措置を取らずに逃走した罪に問われている。
6月24日の公判では被告人質問が行われたが、男は耳が遠いのか補聴器を装着していて、腰はほとんど90度に曲がった状態だ。
こうした中、男は事故当時の状況について改めて「風が強かったし、音も聞こえなかったからぶつかったかどうかはわからなかった」と主張した。
ただ、男は取り調べの段階で衝撃音のような鈍い音を耳にしたと供述していることから、この点について検察が突くと「風の音だね。ぶつかったなんて話はしてないと思うよ」などとあくまでも自らに否はないとの立場を崩さない。
一方で、現場付近に「人はいなかった」と話したかと思えば「人がいたのはわかっていた」などと証言が二転三転。
さらに、質問に対して都合が悪くなると「いつ?って言われてもわかんねぇな」「覚えてねぇな」などと悪態をつく場面も散見されたため、検察から「思い付きで話しているのではないか?」と指摘されると「そうかもしれないね」と認めた。
また、遺族の代理人弁護士から「自分の息子や家族が事故で命を奪われたらどういう気持ちになるか?」と聞かれると「かわいそうだなと思うよ。あとはどういう風に思えばいい?」と逆質問。
釈放されてから今日に至るまでの過ごし方については「寝たり起きたりするだけだよ」と述べ、「きょうはどんな気持ちで公判に臨んだか?」という問いには「何の裁判かなって。他は思わないね」とあっけらかんと答えた。
そして、驚くことに男は自らが命を奪った2人の年齢すら覚えていないという。
法廷の場には遺族もいたことから、最後に「直接言いたいことはあるか?」と問われたが、男は「別にないね、いまは」と謝罪や反省を口にすることはなかった。
被告人質問の前には男と同居しているという息子の証人尋問が行われ、これによれば男は今回の事件以前にも自損事故を起こしていたそうだ。
このため、家族の中では仕事を辞めてもらおうという話をしていたものの、結果としては免許証の自主返納を促すことができず「ただ単に強く言えなかったということ」とうなだれた。
次回の公判は7月15日に開かれる。