被爆の記憶を次世代へ―富山県被爆者協議会・小島会長の挑戦

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「どんどん核兵器による被害の実態が忘れ去られようとしている。語り継ぐこと、若い人の意識を高めることが大事である」。富山県被爆者協議会の小島貴雄会長はそう語る。戦後80年を迎え、被爆体験の風化と継承の課題に向き合う小島会長の思いと活動を追った。

被爆2世が担う継承の使命

小島さんの父親は広島で被爆した。その体験を語り継ぐ使命を背負い、2018年に全国の被爆者団体で初めて被爆2世として会長に就任した。現在、被爆2世が会長を務めるのは富山県をはじめとする5県の団体だけである。

「原爆を受けた人はその瞬間だけではない。その子、孫の心配を抱えなくてはならない」と小島会長は語る。被爆者本人が高齢化する中、次世代への継承という重要な役割を担っているのだ。

縮小する組織と変わらぬ使命

富山県被爆者協議会は1960年に「原爆被爆者及び、その子、孫の健康維持増進と福祉の向上」を目的に発足した。かつては約200人の会員がいたが、徐々に減少。現在は県内の被爆2世4人が活動の中心となっている。

全国組織である日本被団協も同様の課題を抱えている。1956年に設立された被団協は、かつてすべての都道府県に関係団体があったが、高齢化などで11の団体がすでに解散している。今年の総会には全国から約100人が参加し、小島さんは長崎の被爆1世とともに議長を務めた。

若い世代との交流を模索

「話をするたびに思いが募ってくる」と語る小島会長。核兵器の恐ろしさや平和の大切さを若い世代に伝えるため、来月、県内の高校生5人を連れて広島を訪れる計画を進めている。

参加予定の高校生は「中学3年生の時に原爆ドームに行ったが、あまりじっくり見れなかった。この機会で見たいと思ったから。資料館に展示してある展示物やイラストを見て、当時どういう雰囲気だったか、何が分かったかを具体的に見ていきたい」と期待を寄せる。

高校生たちは平和公園や資料館を訪れ、現地の高校生との交流を通じて学ぶ予定だ。小島会長は「広島の高校生は平和教育を小学生から受けている。平和教育を受けていない富山の高校生たちが広島からどんな刺激を受けるのか、受けてきたものを県内に戻ってきてどう広げるか楽しみ」と語る。

記憶の継承 被爆者の思い

去年暮れ、日本被団協(日本原水爆被害者団体協議会)がノーベル平和賞を受賞したことは、被爆者やその家族にとって大きな出来事だった。しかし、その一方で継承の課題は深刻さを増している。

愛知県原水爆被災者の会の丹羽洋子副理事長(被爆1世)は「被爆1世は年をとっていく。2世や3世は思いを伝えていく。これからは命ある限り自分も被爆体験を話して、孫たちにも伝えて広げてほしい」と小島会長に語りかけた。

富山テレビ
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