富山市の声楽家・浅岡節夫さん(95)が、先月29日に95歳の誕生日を迎え、6日に記念のバースデーリサイタルを開いた。2度の脳梗塞で車いす生活となりながらも、会場に響き渡る圧倒的な声量で聴衆を魅了した。「やらなきゃ死んじゃうよ、そのくらい真剣にやっている」—音楽と共に生き、歌い続けるその姿は、聴く人の心に深く刻まれた。

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95歳、聴く者を圧倒する声量

浅岡節夫さんは、元高校の音楽教師。退職後も、教え子たちとつくる合唱団「浅岡会」で定期的に演奏会を開き、富山市内で活躍を続けてきた。

先月29日に95歳の誕生日を迎えた浅岡さんは、6日、バースデーリサイタルを開催。会場には、その歌声を楽しみに多くの聴衆が集まった。95歳とは思えない声量と表現力は、聴く者を圧倒した。

会場を訪れた客は「95歳になってすごいなと、よくあれだけの声が出ると感心した」と目を丸くした。また別の客も「これからも元気でずっと歌っていてほしい」と温かいエールを送った。

2度の脳梗塞、施設から自宅へ

浅岡さんのここ数年は、決して平坦な道のりではなかった。2度の脳梗塞を患い、現在は車いす生活を送っている。去年まで高齢者施設で暮らしていたが、練習環境の整った自宅に戻ることを決断した。歌い続けるために、自宅に帰ってきたのだ。

今の浅岡さんの毎日は、音楽で埋め尽くされている。「もうすぐリサイタルがある。リサイタルのことで頭がいっぱい。そこへ浅岡会の定期演奏会や滝廉太郎(研究会の演奏会)があったりで、毎日発声練習をしている」と語る。

発声練習では「オー・ソレ・ミオ」など本格的なレパートリーにも取り組む。忙しない毎日だが、音楽のこととなると表情は一変し、真剣そのものになる。

「やらなきゃ死んじゃうよ」 命がけで向き合う音楽

この日は、7月に予定している教え子たちとのコンサートに向けた練習も行われた。浅岡さんは教え子に対して細かく指示を出す。「『なー』じゃない、『なぁー』っとクレッシェンド。気持ちと張りが物語の信ぴょう性をぐいぐい出す」。長年培ってきた音楽への眼差しは、95歳になっても少しも鈍っていない。

音楽に向き合う理由を問われると、浅岡さんはこう答えた。「元気になろうとして(音楽を)やっているという一面と、『やらなきゃ死んじゃうよ』みたいな、そのくらい真剣にやっている」。歌うことは、浅岡さんにとって生きることそのものだ。

歌が上手くなりたいという欲求があるかと尋ねると、少し笑いながらこう返した。「そんなことはないが、下手になって当たり前。だんだん落ちてくる。それがやらざるを得ないのでやっていると、まだまだ上手くなる」。年齢を重ねることへの達観と、それでも前を向き続ける姿勢が、この一言に凝縮されている。

7月も「浅岡会」の定期公演 地域に根ざした音楽活動

浅岡さんは7月にも、富山市内で教え子たちとの合唱団「浅岡会」の定期公演を予定している。長年にわたって地域の音楽文化を支え続けてきた浅岡さんの活動は、教え子たちとのつながりを通じて、富山の地に確かに根を張っている。

95歳。2度の脳梗塞を乗り越え、車いすで舞台に立ち、命がけで歌い続ける声楽家の姿は、音楽の持つ力と、人が生きることの意味を静かに、しかし力強く問いかけている。

(富山テレビ放送)

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