東京電力は6月23日、福島第一原子力発電所1号機で不具合が続いていた「大型カバー設置クレーン」について、原因は系統内の部品の詰まりだったと明らかにし、早ければ6月24日にも復旧に向けた作業を開始するとした。
福島第一原子力発電所1号機の使用済み燃料プールには392体の核燃料が残されているが、2011年の事故で水素爆発を起こし、原子炉建屋上部が大きく破損していることから、取出しの際に放射性物質が飛散しないよう建屋を覆う大型カバーの設置工事が進められている。
これまでに側面カバー設置工事を進めていて、さらに側面と屋根カバーの間をつなぐ部品の設置工事を行っていたところ、2025年6月16日、この部品を持ち上げていたクレーンが停止。部品は既に設置されている側面カバーに固定され安定しているものの、クレーンの先の部分を地上におろすことができない状態が続いているため、次の作業に移ることができないでいる。
東京電力による調査の結果、クレーンのワイヤーを巻き上げる系統に異物を確認。部品の破片が詰まったことで、巻き上げに必要な油圧を確保できなかったことがクレーン停止の原因とみられている。
東京電力は6月24日にもクレーン内部のフィルターを交換するなど復旧に向けた準備作業を開始する計画。
東京電力は大型カバーの完成を「2025年夏頃」と見込んでいるが、不具合の発生から約1週間が経過するなか、この事象が全体の工程に与える影響は正確には見通せていない。不具合を踏まえて今後の工程を精査中としている。
その後の予定では2027~2028年度にプールの中の核燃料取出しを開始し、2031年内までに1号機を含むすべての建屋の使用済み燃料プールから核燃料を取り出す計画となっている。
国と東京電力は福島第一原発の廃炉の完了を2051年と掲げていて、建屋に残る核燃料を安定して管理することは廃炉に向けた大きな課題となっている。