ジメジメとした梅雨の季節、私たちが気にするのは家の中や食品に生えるカビですが、実はもっと意外な場所にもカビは発生します。
まさかの「耳の中」にもカビが生えることがあるのです。「newsランナー」の取材班が、耳に潜む意外なリスクについて調査しました。
■「我慢できんくらい痛い」耳の中にカビ!? 驚きの実態
耳にカビが生えた経験のある人は、その痛みを鮮明に覚えています。
【耳にカビが生えた人】「なんかチクチクするなとは思ってたんですけど、だんだんズキズキ痛くなってきて、最後の方は我慢できんくらい。豆腐というかクリームチーズみたいな白い塊が出てきて」
大阪市生野区の「橋本クリニック」の橋本和也医師によると、耳の外耳道に「真菌」というカビが繁殖し、痛みや聞きにくさを感じる「外耳道真菌症」という病気があるといいます。
取材班が入手した実際の症例画像には、耳の中に白いカビや黒いカビが繁殖している様子が映し出されていました。
■イヤホンが原因? カビ発生のメカニズム
耳にカビが生えた人には、ある習慣がありました。
【耳にカビが生えた人】「自分の好きな音楽を聴いて寝たりすることがあって、イヤホンをしたまま寝てしまったりとかして、カビました」
橋本医師は、特にワイヤレスイヤホンのリスクについて警鐘を鳴らします。
【橋本クリニック 橋本和也医師】「(ワイヤレス)イヤホンをされてる人は、いつも密閉されてますから、『外耳道真菌症』になりやすい。この時期、どうしても6月から9月いっぱいぐらいまでは、『外耳道真菌症』の患者さんは、当院では増えます」
長時間のイヤホン使用で耳の中が密閉状態になり、特に湿度の高い梅雨の時期はカビが生えるリスクが高まるのです。
■若者の聴力が急速に老化!?
街頭インタビューでは、若者たちのイヤホン使用習慣が明らかになりました。
【10代学生】「2~3時間くらい。移動中とか課題している時とか」
【20代男性】「3~4時間ずっとつけてるとイヤホンしんどくなる。(耳)痛いな~って時ない?」
【20代女性】「(イヤホンの)使用時間が長い日が連休とかで続くと、コンサートなど聴きに行くときに、前より聞こえづらいかなと」
実は、東海大学の教授らの研究によると、40代以下の若年層で高音部の聴力は、20年前の同世代に比べ徐々に悪化していることが判明しました。
年代ごとに試算すると、20代の女性では、わずか20年間で最大20歳分も聴力が老化していることが明らかになっています。イヤホンの使い過ぎなどによる影響が、若い世代から出始めていると見られます。
■難聴が認知症のリスクを高める可能性
さらに衝撃的なのは、難聴と認知症の関連性です。神戸市立医療センター中央市民病院の内藤泰医師は次のように警告します。
【神戸市立医療センター中央市民病院耳鼻咽喉科顧問 兼 耳鼻咽喉科内藤クリニック顧問 内藤泰医師】「それ(難聴)が高齢になったときに治っていないと、言葉の弁別(識別)が早くからしにくくなるということがありえます。難聴は1つの非常に大きな認知症の原因になる」
実際に難聴の人の脳の動きを調査した画像では、脳の活動が低下している部分が青く表示されています。内藤医師は、この現象についてこう説明します。
【内藤泰医師】「この青いところが脳の活動が低下しているところなんです。音の情報によって我々は、空間の中でどういう状況に置かれてるかを理解してる。聴力が落ちてくると、わかりやすく言うと、世界がどんどん狭くなってくる」
難聴により、人とのコミュニケーションが減ることなどで、感情のコントロールを担う前頭葉など、多くの部分で難聴でない人よりも脳の活動が低下するのです。
■耳を守るための対策
内藤医師は、「耳の調子が悪くても治るだろう」という楽観的な考えが危険だと指摘します。
【内藤泰医師】「(耳の)調子悪くても治るだろうという楽観的な考え方になるんですけど。難聴は治らないことがある。自覚症状としては、軽い耳鳴りとか、耳が詰まるとか、それを放っておかないのが大事」
具体的な対策として、次のようにアドバイスしています。
1. イヤホンを1時間に5~10分外して休憩をする
2. 耳に異変を感じたら早めに病院を受診する
また、番組では日常生活で耳にダメージを与える音の許容時間も紹介されました。
耳元での大声:1日あたり1分30秒
ドライヤー:1日あたり15分
カビの発生や難聴、さらには認知症のリスクも高める長時間のイヤホン使用。大事な耳を守るために、早めの対策が必要です。
耳に違和感を感じたら、「たいしたことはない」と放置せず、専門医に相談することが重要です。
(関西テレビ「newsランナー」2025年6月19日放送)