国連総会の華、各国の首脳が演説を行う一般討論がアメリカ・ニューヨークの国連本部で22日に始まった。2020年春に一時、新型コロナウイルスの感染が急拡大したニューヨーク。世界各国から人々が訪れる国連はいち早く本部ビルの封鎖を決め、多くの会議が延期またはオンライン開催となった。

現在はニューヨークの感染状況は落ち着いているものの、国連総会で議場へは各国1人に限って出席を認めている。当初、アメリカのトランプ大統領が出席し演説する意向を示していたが、結局すべての国の首脳が事前収録のビデオ映像による演説となった。

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国連の舞台でも際立った米中対立

閑散とした議場で初日から火花を散らしたのは、やはりアメリカと中国。トランプ大統領は演説時間の多くで、新型コロナウイルスを『チャイナウイルス』と呼ぶなどし、感染拡大は中国が情報開示せず、外国からの入国を拒み、他国への渡航は制限しなかったなどと、一方的に感染拡大の責任を中国に押し付けた。

対する中国は議場に出席していた国連大使が猛烈に抗議。続く習近平国家主席のビデオ演説でも「政治問題化、汚名を着せることに反対する」とアメリカを非難した。2020年11月に迫るアメリカ大統領選を明らかに意識したトランプ大統領の演説のあと、議場の出席者からの拍手も心なしか少なく感じられた。

米中の対立は、コロナ禍の安全保障理事会でも繰り広げられてきた。中国寄りだとしてアメリカが脱退を表明したWHO(世界保健機関)に言及するかなどで争い、グテーレス事務総長が求めた世界的な停戦決議は3カ月以上も議決できないまま迷走を続けた。

さらにアメリカは脱退したにもかかわらず、イランが核開発を凍結する見返りに制裁を解除するため欧米諸国と結んだ『核合意』に違反しているとして、国連による制裁復活を要求。これも敵対国イランに対して強硬姿勢を示して、保守層からの得票を期待するトランプ大統領の思惑がありありと表れていた。要求は『脱退により制裁を求める権利がない』とする大半の理事国により却下され、アメリカの安保理での孤立が際立つ結果となっている。

着々影響力を強める中国

第2次世界大戦後に創設された国連は2020年、75年周年を迎えた。次の世界大戦が引き起こされなかったことは、アメリカの力もあったことは否定できないだろう。しかしオバマ政権でも「アメリカは世界の警察ではない」と明言。さらにトランプ政権となり、自国第一主義を貫いている。一方で国連の心臓部・安保理では絶大な権力となる『拒否権』を持つ5つの常任理事国の1つでもあるにもかかわらず、アメリカの身勝手な振る舞いは続いている。

対する中国は国連の15ある専門機関のうち、4つの機関にトップを送り込んでいる。さらに中国は国連の中で、ことあるごとに自らの国際戦略をPRする機会をうかがい、着々とその影響力を強めている。

コロナ禍で薄れる国連の付加価値

コロナ禍で国連の議論は主にオンラインで展開されている。これまで国連では大使同士が顔と顔を突き合わせ、相手の微妙な表情や動きもつぶさにとらえながら議論を進めてきた。また会議後の議場やロビーでは、いがみ合った大使同士が改めて言葉を交わす姿も見られた。国と国との利害が複雑に絡みあう中でも、人間味があふれるやりとりがあった。

新型コロナウイルスの影響で国連本部では、外交官や職員の姿も少なく、静まり返っている。徐々に再開されてきてはいるものの、建物の中にはソーシャルディスタンスを保つよう求める表示が至る所にある。中には「対面で話をするのは避けましょう」、立ち話をするために「ここに集まらないでください」と書かれた表示まで出されている。

大国の対立で国連本来の機能が失われている中、人と人との直接の関わり合いから生まれるものの大切さを外交官たちが次々と訴えている。国連日本代表部の石兼公博大使も「バーチャルには限界がある。首脳同士の立ち話などは国連総会の大きな付加価値だが、それができなかったのは残念だ」と話している。

菅首相の外交への船出

25日、国連デビューとなる一般討論演説を行った菅首相は多国間主義の重要性を訴えるとともに「創設75周年の今、21世紀の現実を反映した形での安保理改革を含め、国連改革は、待ったなしの課題」と指摘。日本は2022年の選挙で安保理の非常任理事国入り、さらには安保理改革を進め、常任理事国入りを目指している。

コロナ禍で国連や国際機関に対するあり方が問われている今、日本はこれから国連にどうかかわり、国際社会でどういう立場をとるのか、また世界的な課題にどう取り組んでいくのか、菅首相とっては難しい時期に外交への船出となった。

【執筆:FNNニューヨーク支局 新庄壮一】