東北地方を代表する観光名所の一角に広がる、まるで船の墓場のような光景。
船体はさびだらけで、クモの巣も張り放題。
さらには横倒しになったままの船もありました。
地元住民は「10年もこうほっぽり投げられるんじゃ、置かれた方はたまったもんじゃないですよ」と話します。
廃船群が問題となっているのは、青森県と秋田県にまたがる十和田湖。
十和田湖は世界でも珍しい「二重カルデラ湖」で、周辺の木々とともに織り成す自然の造形美は東北きっての観光ポイントとして知られています。
そうした十和田湖の観光に欠かせないのが遊覧船なのですが、青森県側のある桟橋に行ってみると、放置された船がありました。
船体に書かれた文字が一部読み取れないほどはがれた塗装。
船の至る所が汚れとサビにまみれ、長年人の手が入っていない様子がうかがえます。
付近の住民:
もう何十年もこのままですから、みっともないですよ。(観光の)お客さんにも申し訳ないなと思って。
この桟橋に係留されている5隻のうち4隻が、約10年もの間、不法係留状態。
この4隻はかつて地元の企業組合が遊覧船として使用していましたが、その組合はすでに解散済みだといいます。
地元住民:
どうにもならない。完全に撤去するしかないでしょ。
青森県はこれまで、組合の関係者に何度も撤去を求めてきました。
青森県 港湾空港課・橋本公学課長:
これまで26回ほど指導をしております。先方からは前向きな回答をいただけなかったと。
すると2025年、ある異変が起こったといいます。
FNNのカメラが25年前に撮影していた「第3十和田丸」の塗装作業。
この時、船体は光り輝いていました。
そして、その「第3十和田丸」の現在はというと、横転してロープでつながれ、シートがかぶせられています。
横転直後に撮影された「第3十和田丸」の写真。
2025年2月ごろ、大雪の重みに耐えかね、船体が傾いていったのだといいます。
付近の住民:
「この船危ないね」って言ってたらもう本当に斜めになってて、朝起きたら本当にひっくり返ってたんですよね。
景観の悪化どころか、周辺の安全にまで大きな影響を及ぼし始めた十和田湖の廃船群。
この事態を受け県は5月末、これまでの指導よりも一段階踏み込んだ“撤去勧告”を関係者に行ったといいます。
ただ、勧告には強制力はありません。
青森県 港湾空港課・橋本公学課長:
まだ今のところ、先方からの回答はございません。速やかに対応していただきたい、これに尽きるかと。