長野市飯綱高原で6月8日、メルヘンチックな見た目の洋菓子店がグランドオープンしました。営むのは新潟県上越市の夫婦。自らリフォームを行い、「老後の楽しみ」として始めた店で、初日から多くの客でにぎわいました。
長野市飯綱高原の緑が広がる道を進むと、現れたのはカラフルな建物。絵本の世界から飛び出したようなメルヘンチックな見た目です。8日は、長い行列もできていました。
子ども:
「ジブリみたい」
須坂市から:
「急に魔法の世界みたいですごく新鮮」
お目当ては、建物だけではありません。客たちのトレーにはたくさんの洋菓子がのっています。
ミルクチョコレートがたっぷりと入った生地に岩塩を加えてしっとりと焼き上げた「まろ塩ショコラ」に。じっくり焼き上げた生地に生クリームを少し加えたカスタードクリームをはさんだシュークリーム。店の外観がデザインされたオリジナルのクッキー缶も。
購入したものはイートインスペースで食べることができます。
子ども:
「おいしいものの味する」
まるで「お菓子の家」のような洋菓子店。8日グランドオープンした「くるみぼーる」です。
営むのは、新潟県上越市の牧野嶋智佳子さん (69) と夫の良巳さん (72) 夫婦です。上越でも洋菓子店を営んでいて、飯綱高原の店は「2号店」となります。
くるみぼーる・牧野嶋良巳さん:
「ギリギリやっているけど、頑張ってやっていきたい」
くるみぼーる・牧野嶋智佳子さん:
「来てくださる方が喜んでくれれば一番いい」
お菓子作りの担当は智佳子さん。
くるみぼーる・牧野嶋智佳子さん:
「焼き菓子の素朴な感じの味が大事にできたらいいと思って作っている」
一方、良巳さんの担当は。
牧野嶋良巳さん:
「絵が描いてあるけどこれは1枚の板です」
建物のリフォームです。メルヘンチックな建物は、 24年の歳月をかけ、1人で手がけました。
牧野嶋良巳さん:
「ここでイートインで食べてもらおうかなと思って。(何をモデルに?)キャンピングカーのトレーラーのような感じ」
2号店は、夫婦が「老後の楽しみ」として準備を進めてきたものです。
夫婦がこの場所と出会ったのは、 24年前 。遊びに来た時にたまたま通りがかり、ほれ込んだと言います。
牧野嶋良巳さん:
「(飯綱は)清々しいです、いるだけで。裏には小川が偶然あって」
牧野嶋智佳子さん:
「2人で老後の楽しみで、のんびり近所の方とお茶飲んだり、お菓子を食べたりできたらいいと思って買った」
別荘にしようと空き家だった建物と土地を購入。夫の良巳さんは、当時、上越市の病院で放射線技師 として働いていて、休日ごとに飯綱高原に通い、1人でリフォームを始めました。
作業はすべて独学。資材も知人から譲り受けたものを使い、低予算で進めてきました。ただ、最初からメルヘンチックな建物にしようとしていたわけではないと言います。
牧野嶋良巳さん:
「本当は石を貼りたいけどお金も時間もないし、塗ってしまえばいいかなと始めたらこれでいいかなと思って。(色は)ホームセンターで売っている3色、赤、青、黄色と、そんなにホームセンターにないから、かえって良かったのではないか」
様変わりしていく建物を見た智佳子さんは。
牧野嶋智佳子さん:
「なんか来たら違っている、来るたびにいろいろ変わっていた。この人がこういうかわいい色使うのかと思いましたけど」
別荘を購入したころ、老後の楽しみにしようと製菓の専門学校に入り、お菓子作りを学んだ智佳子さん。卒業後、病院のカフェなどで菓子の販売を始め、 2020年に上越市の自宅の一角に「くるみぼーる」を開業しました。その頃には、飯綱高原の別荘で店を開くことも決めていました。
牧野嶋智佳子さん:
「せっかく長野の家があるから、長野でお父さんに頑張ってもらって(長野でも)やろうと。老後の楽しみでできればいいかなと思って」
建物のリフォームが進んだ2024年8月から 、週末限定で、上越の店で作った商品を持ち込み、販売を始めました。
するとー。
牧野嶋智佳子さん:
「反応はすごい、メルヘンだね、不思議な国とか」
牧野嶋良巳さん:
「女の子はラプンツェルの格好したりして来るから」
SNSなどで建物が評判となり、たちまち多くの客が訪れるように。
数に限りがあり、すぐに売り切れていましたが、より多くの客に商品を届けるため、飯綱高原の店にも厨房をつくり、お菓子作りの拠点を移すことにしました。
迎えたグランドオープン当日。一番に並んでいたのは、新潟県から来た夫婦です。
新潟県から:
「前からSNSで見ていて、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家みたいなかわいいおうち」
待ちわびた客が開店前から列を作っていました。
午前11時オープン。シュークリームを購入すると、早速イートインスペースへ。メルヘンな世界観に浸りながら味わいました。
新潟県から(夫):
「ナッツがいい仕事している」
新潟県から(妻):
「皮がぱりぱりでアーモンドが香ばしくてクリームがすごい滑らかでおいしい。メルヘンチックなところでおいしいお菓子を食べられて最高です」
埼玉から来たこちらの夫婦は、「ガトーショコラ」を。
埼玉から(妻):
「濃厚でおいしかった。インスタを見ていて建物がすごくかわいかったので、(開店を)待ってました」
埼玉から(夫):
「この雰囲気もごちそうなので本当にメルヘン。曲線を上手に使っている、屋根をこんな曲線でつくれるのだと不思議」
飯綱高原にポツンとたたずむ「お菓子の家」。思い描いていたよりも忙しい「老後の楽しみ」となりそうですが、夫婦はこれからも、おいしいお菓子と楽しい空間を提供していきたいとしています。
客:
「(建物)すごいですね、また来ます。ありがとうございます」
牧野嶋良巳さん:
「頑張りましたね、すごいですねとか言っていただいてうれしい。建物は造って悪いところは手直しする方針でやっています、きりがないですね」
牧野嶋智佳子さん:
「(良巳さんは)生涯ずっと(建物を)造り続けていると思います。皆さんに申し訳ないくらい、お菓子がなくなってしまって作っても作っても追いつかなくて。楽しみながら来てもらい、お菓子を買って幸せになってもらえたら」