富山県小矢部市の宮島峡からブロンズ製のビーナス像が姿を消した。銅像盗難が相次ぐ県内で、今回は山中に設置された12体のうちの1体が被害に遭った。盗難が続く背景には銅価格の高騰があるとみられている。

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人目につかない山中で「清風の像」が消えた

小矢部市の景勝地「宮島峡」で、ブロンズ製のビーナス像1体が盗まれる事件が発生した。盗難被害に遭ったのは「清風の像」と呼ばれる高さ約1.8メートルのブロンズ像である。先月中旬、通りがかった人が像がなくなっていることに気づき、小矢部市が警察に被害届を提出した。

現場は人目につきにくい山中の高台に位置している。足元から切断された形跡があり、道路からは見えにくい場所だったため、盗難に気づくのが遅れた可能性がある。宮島峡には清流の自然美に合わせて12体のビーナス像が設置されており、地域の観光資源となっていた。

相次ぐ銅製品の盗難、背景に価格高騰か

富山県内では今年に入り、金属製品の盗難が相次いでいる。4月には高岡市金屋町で4体の銅像が盗まれ、5月には同じく高岡市の鋳物製造会社から銅合金の塊「インゴット」が150個も盗難される事件が発生した。

これらの盗難事件の背景には、銅価格の高騰があるとみられている。近年の資源価格上昇を受け、銅などの非鉄金属は高値で取引されており、盗難被害を助長する要因となっている。

「意表を突かれた」市は見回り強化へ

小矢部市では一連の盗難事件を受け、目立つ場所に設置されたビーナス像の見回りを行っていた。しかし、今回被害に遭った場所は見回りの対象外だったという。市の担当者は「意表を突かれた」と困惑を隠せない様子だ。

宮島峡にある温泉旅館「滝乃荘」の中嶋秀明社長は「あるものがなくなるのは大変寂しい。早く戻って欲しい」と話し、地元の観光資源が失われたことへの残念な思いを語った。

小矢部市は今後、宮島峡に設置されている残りのビーナス像についても見回りを強化する方針を示している。地域の文化的資産を守るための対策が求められる中、銅製品の盗難防止に向けた取り組みが課題となっている。

富山テレビ
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