コメだけでなく毎日の食卓に欠かせない卵も高値が続いています。全国平均の価格推移をみると、2024年春に一度下がったものの、またじわじわと上昇。5月時点では10個入りパックで297円と平年と比べて50円近く高くなっています。“庶民の味方”ともいわれる卵。県内の現状と養鶏農家の声を取材しました。
福井市の平和堂「アル・プラザ ベル」。
宮川裕之記者:
「こちらの売り場ではきょうは、卵10個入りのパックが一番安いもので税込み268円となっています」
買い物客は―
「1割くらい高く感じる」
「ちょっと高い…困るけどないと寂しい気がするし
「卵は良く食べるので高くても買わないと…」
こちらの店では、価格が昨年の1.5倍になっています。
店の担当者は「活用頻度が高い商品なので店としても心苦しいが、価格が下がることは考えにくい状況。基本的には高止まり状態でなはいか」とします。
価格が長年安定していたことから“物価の優等生”ともいわれた卵。しかし、ロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに鶏の餌代が高騰し、2023年には一時、全国の平均価格は1パック300円を超えました。
その後、価格は一旦少し下がったものの店の担当者は「去年秋から冬にかけて鳥インフルエンザが流行してニワトリが減ったことで、卵も減った」といいます。
5月の価格は、10個入りパックで297円と、2024年の同じ時期に比べると50円も高く、300円に迫る勢いです。
しかし困っているのは、消費者だけではありません。
田島嘉晃アナウンサー:
「家庭でも“たまご高”が苦しんでいますが、その卵を育てる現場もまた、大きな試練に直面しています」
あわら市にある養鶏農家・黒川産業では、福井のブランド地鶏「福地鶏」2000羽を飼育していますが、餌代の高騰で、飼育コストが大きく膨らんでいるといいます。
黒川産業・黒川公美子さん:
「9年前に飼育を始めた時は(餌代は)1トンあたり3万円ぐらいだったが、今は餌の種類にもよるが1トンあたり7万円ぐらいと結構上がっている」
運送費や光熱費も上昇し、9年前に1個30円以下だった卵は、今や68円。価格転嫁はしているものの、経営としては厳しい状況が続いています。
さらに追い打ちをかけるのが猛暑です。ニワトリは暑さに弱く、温度管理は卵の質に直結します。そのため鶏舎では、24時間換気扇を回しています。
「しっかりとご飯食べている時はきれいな卵を生むけど、水しか飲まなかったりすると表面がざらついたり、つかむと割れてしまったりするような卵になる」と黒川さん。
猛暑日には扇風機を追加することもあります。「鶏舎の中で散水したりミストを出したりすると床面がドロドロになってしまう。そうすると菌が繁殖してしまうので、風だけにしている。もっと設備がしっかりしていれば、冷却装置を付けて冷たい空気を送ることもできるが、そこまでの余力がない」
物価高や猛暑は、養鶏農家の経営にも影響を及ぼしています。
“物価の優等生”と言われてきた卵ですが、“当たり前に安く”という意識を、消費者も見直していく必要があるのかもしれません。