現職が進めてきた新図書館建設の反対を訴え、伊東市の新たな舵取り役となった田久保眞紀 新市長。市政初の女性リーダーが目指す先と素顔に迫った。
原点はメガソーラー建設反対運動
5月25日、現職に約1700票差をつけて初当選した田久保眞紀 新市長。
就任早々、公約に掲げた通り市が進めてきた新図書館の建設に関わる入札を中止するなど早くも存在感を放っている。

田久保市長は千葉県船橋市生まれの55歳。
中学3年生の時に家族と共に伊東市へと移り住んだ。
大学卒業後は都内で会社員をしていたが、ひとり暮らしの母を心配して15年ほど前にUターン。
カフェのオーナーとして奮闘する日々だったが、そんな中、地元で巻き起こったのがメガソーラー建設の反対運動だった。

9年にわたる運動の結果、市が規制条例を施行させたことでメガソーラー計画は事実上棚上げに。
この活動に身を投じたことが政治の世界へと進むきっかけとなった。
田久保市長は「議員になりたいとか政治の世界に入りたいというのは全然なかった。メガソーラーの問題がすごく佳境に入っていた時で、私たちの中から議会に入って、しっかりとコミットしていく人がいないと大きな社会問題は終わらないということを活動の中で実感した」と振り返る。
石橋を叩いて…突っ走る!
今回の立候補は母のミエ子さんに相談することなく決断を下し、ミエ子さんは「新聞を見てびっくりして、(市長選に)出てびっくり、当選してびっくり」と笑う。
そして、「体に気をつけて、皆さんと約束したことを少しずつ実現させてもらいたい」とエールを送った。
何事も思い立ったと同時に”石橋を叩きつつも突っ走るタイプ”という田久保市長。

自宅には女性に根強い人気を誇るゲーム「うたのプリンスさま」のキャラクターグッズがずらりと並び、趣味は読書に音楽、さらにアニメにバイクと多彩だ。

また、車も好きで、「賛否あるかもしれないが市内でも少し南の方に住んでいるので、(職員に)わざわざ迎えに来てもらってまた送ってもらうとなると結構時間もかかるので、それなら自分で行ったほうが時間も効率も良いのでは」と市役所には真っ赤な愛車を自ら運転して登庁している。
大きな枠組みを示し市民の意見を汲み上げたい
観光や福祉をはじめとする行政執行に関わる決裁はもちろんのこと、施策に関わる打ち合わせや会議、イベントへの出席など多岐にわたる市長の仕事。

就任から1週間ほど経ち「慣れてきました」と口にする一方、「就任したてなので挨拶に来てもらったりなどが多く、その分ちょっと(応対が)多いと思う。通常のペースになってどのぐらいなのか、もうしばらく経たないと分からない感じ」とも話す。
ただ、新しい交通サービスの導入やハコモノ行政からの脱却を選挙戦で掲げた田久保新市長だが、一方で抽象的な公約が多いという批判があるのも事実だ。

こうした声に対して、田久保市長は「私が何をしたいかというよりは今この街に何が必要なのか、市民の皆さんが本当に今必要だと思っているのは何なんだろうということ自体がテーマになっていた」と選挙戦の争点を総括し、「私の方で『これ』と決め込むよりは、大きな枠組み示して、その中で市民の皆さんの『これが一番大事』とか『もっとこっちをやってもらいたい』という意見が出てくるような形にしたい」と述べた。

その上で、「公共施設やインフラの老朽化は非常に深刻になってきている。新しい建物を建てることは夢があるかもしれないが、むしろ本当に今のうちに直しておかなければいけないものがたくさんある」との認識を示し、「本当に早急に対応して行かないと間に合わなくなるので、1年目は地道な仕事かもしれないが、そういったことを市民に示して理解してもらうこと、それをしっかりやっていきたい」と意気込む田久保市長。

人口約6万4000人の静岡県伊東市。
その8割が観光産業に従事し、農業や水産業も盛んな土地柄にあってどのように持続可能な自治体を作り上げるのか。
財源が限られる中で、その手腕が問われている。
(テレビ静岡)