この春、宮城県大崎市に開校した公設公営の日本語学校が6月10日で開校から2カ月となりました。大崎市はこの学校に人口減少からの脱却とさまざまな文化の人たちが共に生きる社会という未来を描きます。
午前10時、おおさき日本語学校の一日が始まります。
この日、1年課程で行われていたのは漢字の授業。画数の多い字に苦戦しながらも一文字一文字、丁寧にノートに書き写していきます。
留学生(インドネシア出身)
「(授業は)すごく分かりやすい。そしてすごく面白い。(Qきょうは漢字の授業だが?)私は漢字がすごく下手なので、たくさん練習しなければなりません」
大崎市立おおさき日本語学校は、全国で2例目の公設公営の日本語学校として4月に開校しました。一期生は、台湾、ベトナム、インドネシアから28人。学生寮で生活しながら、1年から2年の課程で日本語を学びます。半分以上の留学生が卒業後、日本で働くことを希望しています。
留学生(ベトナム出身)
「目標は、将来日本で働きたいです。宮城県で働きたいです。通訳かな、通訳したいです」
留学生(台湾出身)
「宮城県と大崎市の風景を伝える仕事、観光関係の仕事をやりたいです」
大崎市立おおさき日本語学校 鈴木俊光校長
「本当に優秀な人たちが集まってくれたので、(教員は)非常に毎日の授業がやりがいがあって、地域の期待に応えようと頑張っている」
おおさき日本語学校は、もともと県が主導する構想の中で誕生しました。地方の人口が減少する中、海外からも人を呼び込み、定住人口や交流人口の拡大につなげようという狙いです。
大崎市 伊藤康志市長
「従前の取り組みだけでは少子化、生産年齢人口の減少や人口減少に歯止めがかからない。その解決の一策として、いち早く立候補させていただいた」
県の構想にいち早く名乗り出たのが大崎市でした。日本語学校だけでなく企業説明会など留学生の就職にも力を入れ、卒業後の定住を促します。
大崎市 伊藤康志市長
「海外から来る方々が安心して、ここで仕事をしたり学んだり、生活することのお手伝いができるような、そういうまちを目指す」
5月、留学生たちの姿は田んぼにありました。地域の小学生と一緒に田植え体験です。おおさき日本語学校は、地域住民との交流にも力を入れています。
狙いのひとつは、実践的な会話を通じて育む「多文化共生」への土台作りです。
大崎市立おおさき日本語学校 鈴木俊光校長
「教室の中だけでは生きた日本語を勉強できない。外に出たり、日本の文化を直に肌で体験することによって、日本で生活できる外国人が育つと思う」
留学生(台湾出身)
「本当に田植えは大変だと思った。きょうからもっとお米を食べることを大事にしたい」
留学生の存在は、地域の人たちにも少しずつ変化をもたらし始めています。学生寮のある地区で開かれた行政区長などの集まり。そこで、ある提案がありました。
学生寮がある中里地区の住民
「大崎市の役所のほうからも地域の行事にぜひ参加させてほしいと。大名行列が今年タイムリーにあるから」
江戸時代の衣装をまとい、総勢100人以上が町を練り歩く地区の伝統行事、「中里後陳大名行列」。人口が減る中で、祭りの活気を取り戻すため留学生を招こうという提案です。
中里地区の行政区長
「交通ルールとか、そういった習慣が違うから、最初は不安があったと思う。今も思っている人はいると思うけど、地域の交流を通じてお互いに歩み寄れば、そういったところは薄れていくと思う」
参加者の一人、早坂竜太さんは留学生の寮の建設、運営にも携わっています。
古川土地 代表取締役 早坂竜太さん
「ここを好きになってもらわないと、架け橋にはなってもらえないと思う。地域の皆さんを含めてみんなから歓迎される、そういった空気を作っていくことが非常に大事」
地域を挙げて留学生たちを受け入れようとする大崎市。留学生たちは、どう感じているのでしょうか。
留学生(ベトナム出身)
「ここは住みやすいと感じている。(Q地域の人たちはどうですか?)優しいです。いつも私たちを温かく支えてくれている」
留学生(インドネシア)
「非常に優しいです。いろいろお世話をしてくれてすごく感謝です」
大崎市立おおさき日本語学校 鈴木俊光校長
「本校は日本語能力のスキルを上げるだけではなく、日本で生活できる外国人を育成しようというふうに思っている。日本の生活文化、そして地域との関わり、そういうものを学んで育っていってほしい」
大崎市 伊藤康志市長
「地方がまさに目標を持って元気に維持、成長していけるような、日本語学校を核にした多文化共生の地方創生のモデルをぜひ作っていきたい」
“地域の担い手”として根づき、活躍してもらうために。人口減少が進む中、地方の新たな可能性を切り開く挑戦は始まったばかりです。