今回お邪魔するのは、行列の先にあるこちら。
2013年オープン「増田うどん」。
連日多くのお客さんで賑わう本格うどん専門店です。
中でも人気なのが、身も心も温まる、その名も「増田肉うどん」。
開店3時間前、お店の厨房では既に仕込み作業が始まっていました。
「前日に仕込んでいた生地を伸ばして麺にする作業です。大体20キロ、150~200食分くらい。4種類の小麦粉は、道産のものと他のものを混ぜています。モチモチとするような、噛んだときに『こつっ』じゃなくて『ぐにゅっ』っていうのが理想」(増田うどん 藤田明廣さん)
仕込み作業は大きく4つ。
スムーズな提供のために入念な下準備が行われています。
「肉のレシピは継ぎ足しをしていて、すぐに作れるものではない。これが一番大事かもしれない」(増田うどん 増田英之社長)
もう一つ大事なのが、ごぼうを切る作業。
「うちの看板メニューのごぼ天用。5キロぐらいは消費します。厚いと火が通りづらくなるので薄めに」(増田うどん 田中俊行さん)
「ごぼう切りは奥が深い。私が切るとごぼうが反るんです。でも彼が切ったら反らない。(彼は)ごぼう切り職人です」(増田社長)
「見た目が良くなるように真っすぐという気持ちで切っています」(田中さん)
そして、うどん店の命ともいうべき“だし”。
グラム単位できっちり測って、ぶれのない味を実現。
「かつお節、煮干し、昆布、雑節が入っている。全部が調和するというか、ただただうまいっていう、バランスの良いだしですね」(増田社長)
「(Q:『ぶっかけうどん』か『かけうどん』か)夏場は絶対ぶっかけです。ほぼ8割。(きょうの予想は)半々ですね」(増田社長)
開店5分前。
最初のお客さんが並び始めたところで、本日の営業に挑む布陣をご紹介。
厨房には麺担当の藤田さん、天ぷらは増田社長、盛り付けは田中さんがメインを務めます。ホール担当は紅一点の別井さん。
今回は計9台のカメラで満席の様子を捉えます。
午前11時、のれんがかかって、いよいよ営業開始です。
続々と入店するお客さん。あっという間に3組が着席。
注文を受け付ける前に、なんと麺がゆで始められています。
「理想はお客様が席に着いたと同時に、うどんが到着するのがベストですよね」(藤田さん)
麺を茹でる時間はきっちり7分。
藤田さんの高速麺洗い、田中さん得意のダブル湯切りが炸裂し、早くも肉うどんが完成です。
最初のお客様への提供時間は、注文からわずか8分35秒。
「最速でいいもの&丁寧なものがこだわり。そこまで気を使わないと生き残れないと思っていますね」(増田社長)
そんな渾身の一杯、増田肉うどん。
甘く煮込まれた牛肉には旨味が凝縮。
バランスのとれただしとコシのある麺が、絶妙なハーモニーを奏でます。
「あまり北海道にないですよね。急に食べたくなります」
「お肉に味がしみていておいしい」
「旭川から来ました。旭川にもないからおいしいです」(いずれもお客さん)
厨房に戻ると、藤田さんがぶっかけうどんに着手。大きなごぼ天が乗せられました。
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」(別井さん)
ゆっくり味わいたいのが、ごぼ天うどん。
からっと揚げられたごぼうは、まるで食べるアート。ごぼうの風味が、うどんやだしをさらにおいしく感じさせます。
「ごぼうのサクサク感に加え、だしも効いていて、ダイナミックです」
「ごぼうに味がついているからだしと合う」
「こんなごぼうのうどん、他にない」(いずれもお客さん)
「ランダムに美しく。お客さんの心が動くようなごぼうを作るようにしている。せっかく来てくれているので、感動してほしい」(増田社長)
開店から35分、本日も満席達成。
「(Q:満席になりましたね)良かったです。若干遅いかなと思ったんですけど、(この後)午後3時過ぎまで満席だと思います」(藤田さん)
この日は雨にも関わらず、開店から早々の満席。
注文数のランキングはご覧の通り。雨と寒さの影響で、増田社長の予想に反して、かけうどんが圧勝。
がっつり系の天ぷらうどんや、4月までの季節限定メニュー、鍋焼きうどんが駆け込み需要で大躍進という結果に。
しかし、不動の上位を占めた看板メニュー、「ごぼ天うどん」と「肉うどん」。
なぜこの2つが増田うどんの顔になったのか。その秘密とは…。
「最初、私は肉うどんをやりたくて。ごぼ天はあまり好きではなかったんです。でも、母はごぼ天が好きなんですよ。『ごぼ天はやるでしょ』ということになって」(増田社長)
福岡県出身で、父母を呼び寄せ、うどん店を開店。
現在はおはぎ専門店を開いている母のこだわりから、二大看板の一つ「ごぼ天うどん」が誕生。
「肉うどんに、母が言っていたごぼ天も乗せちゃって。肉とごぼうの最強の(組み合わせ)という感じです」(増田社長)
息子と母の思いを合わせた最強のタッグが、肉うどんにごぼ天をトッピングした一品。
これからの季節にはぶっかけにすることで、サクサクのごぼ天と肉、うどん、だしを堪能できるスペシャルメニュー。
うどん大国福岡出身ながら、同じくうどんの本場、香川で修行したという増田さん。
お客さんの中にも…。
「1年だけ香川にいたことがあって。なかなかおいしいお店が見つからなかったんですが、ここは香川と同じぐらいおいしい」(徳島出身のお客さん)
「ごぼ天は福岡うどんの代表なので他のところではあまり食べられない。懐かしい感じがします」
「北海道の肉うどんは豚肉が多い。福岡は牛肉なのでおいしいですよ」(いずれも福岡から転勤で来たお客さん)
「讃岐の麺が一番おいしいと思ったんです。せっかく自分の店を作るんだから、麺とだしと具、この三つが全部自分の好みのうどんを作ろうと。『讃岐うどん?福岡うどん?』とよく聞かれるんですが、違うんです。増田うどんなんです」(増田社長)
今や、連日満席になる人気店ですが、開店当初は苦戦したといいます。
初めて満席になったきっかけは…。
「あるメディアの生中継でした。それでやっと知ってもらえたのかな。おいしいうどんを作る自信はあったので、お客さんに感謝です。来てくれてありがとうございます。限りなく100点に近い商品を常に出したい、出さなきゃいけないって思ってます」(増田社長)
札幌にあるうどんの人気店、「増田うどん」に密着してみたら、店主と母のこだわりが詰まった究極の満席メシを見つけました。