明治時代に刑法ができて以降、実に118年もの間変わることがなかった、罪を犯した人に課される「刑罰」。これが今月変更され、新たに「拘禁刑」というものが導入されました。一体なにが変わったのか、竹内記者とお伝えします。
これまでの刑罰は主に、刑務作業が義務付けられる「懲役」と、刑務作業の義務がない「禁錮」がありましたが、これが「拘禁刑」に一本化されます。
拘禁刑は、
1.刑務作業が義務ではない。
これは禁錮と同じですが、
2.受刑者の特性に合わせて「更生プログラム」が作られる。
これが大きな特徴です。
更生プログラムは年齢や障害の有無、依存性、刑期などさまざまな特性を考慮して24のカテゴリーに分けられ、受刑者はそのプログラムに沿って刑期を過ごす事になります。
イメージとしては、これまでの懲役では、「懲らしめ」として刑務作業を義務的にさせるといった形でしたが、拘禁刑では、刑務作業は、対話や農作業などさまざまある受刑者の更生に向けた手段のうちの一つという位置づけで、”必要であれば行う”というものになります。
ーー刑法を専門とする吉中さん、この拘禁刑の導入、目的はどこにあるのでしょうか。
■拘禁刑の目的・ポイントは
【コメンテーター:広島大学法学部長・吉中信人教授】
まず一つ、「再犯防止」なんですね。結局、懲らしめているだけでは犯性向というのが治りませんので、社会に出た時に、また再び犯罪をしないようにしてもらうことが一つ。それから社会に戻った時に、きちんといろんな技能を身につけて、いろんなプログラムを受けて「社会復帰」してもらうということが、次の被害者を産まない社会になるということ。この二つがあると思います。
再犯防止という話がありましたが、広島刑務所には現在およそ650人の受刑者がいますが、そのうち再犯の受刑者は実に85%で、中には10回以上入所を繰り返している受刑者もいるそうです。
再犯が多い状況を改善するため、広島刑務所は、受刑者との”対話”に力を入れたいとしています。
そこで先月新たに作られたのが、観葉植物とか間接照明とかある部屋。
「カウンセリング室」です。
ーー刑務所という感じがしない…
受刑者がリラックスしながら刑務官と対話する中で自分を見つめなおし、更生のきっかけをつかんでほしいという事です。
ーー正直、刑務所が受刑者にとってより居心地の良い場所となって、果たして更生をつながるのかと感じる…
被害者の中にはそれ相応の懲らしめを与えてほしいという声もあっ賛否分かれるところです。その点について、広島刑務所の運営を指導・監督する「中国矯正管区」のトップに話を聞きました。
【中国矯正管区・八代宏幸管区長】
「被害者のこともしっかり想いながら、そういった時間も作らせながら受刑生活に臨ませる。被害に遭われた方のことを想いながら社会でもしっかりと立ち直るような生活をできていくように、施設側も教え込んでいく必要があるのかなという風には考えております」
自分の罪と向き合う時間と、社会復帰のために必要な指導を行う時間を増やすことで更生を促したいということです。
吉中さん、改めて拘禁刑の導入は受刑者の更生につながっていくでしょうか?
【コメンテーター:広島大学法学部長・吉中信人教授】
様々なプログラムが用意されています。それぞれのその受刑者といっても本当に一人一人違うわけです。それを特性によって分別して、きめ細かな対応をしていくということなので、今後の更生が進んでいくことに期待したい。
ーー刑務官の負担も増える?
【コメンテーター:広島大学法学部長・吉中信人教授】
これに対応していくためには、刑務官の皆さんもいろんな研修を積んだりして非常に頑張っておられると思います。