衆議院で5月30日、年金制度改革法案が可決された。厚生年金積立金を使って基礎年金を底上げし、男性62歳・女性66歳までは給付増だが、高齢層は減額も見込まれている。

衆院可決も審議不足との批判相次ぐ

5月30日、衆議院で年金制度改革法案が可決された。将来世代の基礎年金の底上げが注目されているが、年金額が増える世代や減る世代が出てくる。

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自民・公明・立憲民主の3党などの賛成多数で衆院を通過した年金制度改革法案。5月30日午前に開かれた衆議院厚生労働委員会で日本維新の会は、修正案の審議は2023年に議論が始まったばかりだとして、議論が不十分だと訴えた。

日本維新の会・青柳政調会長:
ちゃんとした抜本的な議論を行うような期間、そしてその場が必要ではないか。

石破首相:
各党において本当に真剣な議論を積み重ねた結果、今日のこの委員会に結実している。

立憲民主党・長妻議員:
現役世代の厚生年金の目減りを防ぐ。これを防ぐような修正案を出して、そしてギリギリ審議をしている。もっと早期に出していただきたかった。

5月30日午後に開かれた衆院本会議では、今回、与党と修正協議を行った立憲民主党に対して、も批判の声が上がった。

国民民主党・浅野議員:
野党の総意を与党に伝える筆頭の立場の野党第1党が重要な広範議案の審査で、他の野党との協議を横に置き、真っ先に与党との協議に突き進んだ一連の行動には、強い違和感。

この法案の最大のポイントは、厚生年金の積立金を活用した「基礎年金の底上げ」だ。
法案には4年後の財政検証で、将来的に基礎年金の給付水準が下がりそうな場合には、厚生年金の積立金の一部と税金を使って底上げすることを盛り込んだ。

この底上げが実際に行われた場合、今の制度に比べ、どれくらい給付額に違いが出るのか。

厚労省の試算によると、年齢によって増える受給額に差はあるが、男性は62歳、女性は66歳まではプラスになる。一方で、現在63歳以上の男性や67歳以上の女性は、今より受給額がマイナスになる。

厚生年金の受給額が減る場合、緩和策も盛り込まれているが、試算で「マイナス」に該当するシニア世代に話を伺った。

70代:
憤慨です。他を切り詰めるかしないとダメ。今のままではね。

60代:
実際にどこまで下がるかが問題。下がるんだったら、保険料も下げてもらいたい。税金も。

60代:
下がるのは困る。今までもらえてたものが少なくなるっていうのは。でも仕方ないのかなと思うところもある。

「プラス」になると試算されている現役世代はどう感じているのか。

40代:
上がったとしたら、やっぱり嬉しい。200(万円)超だったら、子供がいるので子供に充てられたり。

20代:
増える分にはいいと思う。

年金額が増えるという世代からは、喜びの声が多いのではと予想していたが、こんな声が一番多く聞かれた。

40代:
本当なんですか?その試算が。60歳が定年だとしても13〜14年あるので、そこまで考えられない。60歳になって「どうにもできません」じゃなく、今の段階で(就職氷河期世代を)どうにかしてほしい。

30代:
就職氷河期を経験して、ずっと手取りが少なくて苦しめられてきた身としては、将来のお金を考える制度よりも、今の手取りを増やすような改革に踏み切ってほしい。

厚生年金の積立金流用に今後の懸念

青井キャスター:
世代や経歴によって受け止め方は違うようですが。

SPキャスター中村竜太郎さん:
街頭のインタビュー受けてくださった方のコメントを聞いていると、生活に直結する分だけ非常に切実な感じがするんですよね。やはり不公平感をなくしていくとか、制度そのものをもう一回考え直すということも必要なんじゃないかなと思います。

青井キャスター:
今後について、議論の場を参議院に移す年金制度改革法案ですが、フジテレビの智田解説副委員長はこう指摘します。

智田裕一解説副委員長:
この改革法案で氷河期世代をはじめ、就職などで苦労した世代を下支えしようという考え方は評価できます。

青井キャスター:
その一方で、こんな懸念も。

智田裕一解説副委員長:
厚生年金の積立金を基礎年金に活用するという前提ができれば、今後、年金財政が苦しくなった時に同じようなやり方が取られるのではという懸念が出ているのも事実で、将来の給付水準を確保するために制度はどうあるべきかという、根本的な議論が求められています。

5月30日の衆議院通過で、年金制度改革法案は今の国会で成立する見通しとなった。
(「イット!」5月30日放送より)

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