戦後80年という節目を迎え、戦争の記憶を未来へ継承しようと奮闘する若者たちの姿がある。富山大空襲の体験者の話に高校生が耳を傾け、平和について考える集会が富山市内で開かれた。
若者たちが紡ぐ「戦争の記憶」


「富山大空襲について知ってもらうところから始まって、戦争や平和について考えて自分たちに何ができるかということを考え未来に向けて思いを共有するところが目標」
高岡南高校3年の薬師子龍さんはこう語る。薬師さんは戦争の記憶継承に取り組む高校生グループ「輪音」の共同代表だ。
輪音は戦争の記憶を継承しようと去年結成され、活動を続けている。富山大空襲から80年を迎える今年、当時を知る人が年々減っていく現実に直面するなか、体験者の声に耳を傾け、平和について考える集会を開いた。
集会には、輪音のメンバー5人を含むおよそ20人が参加。会場には、富山大空襲を体験した90歳の祖父とともに、親子3世代で語り継ぐ活動に取り組む西田七虹さんの姿もあった。
富山国際大学付属高校2年の西田さんは、「応募された方全員集まったのでとりあえずオッケー。高校生が多いが年齢制限を設けずに募集したイベントなので世代問わずいろんな世代と話すことで、高校生もだけど大人の方も意見を広めていってもらいたい」と話した。
消えることのない「家族を失った悲しみ」

集会ではまず、富山大空襲を語り継ぐ会の中田博さんが、3歳の時の体験を語った。中田さんは大空襲で姉と兄を亡くした。
「2人の子ども(姉と兄)は戻ってこなかった。自分にも人にも厳しく、人前で涙を見せることのない父が子どもが見つからないと言って目を潤ませていた」
涙ながらに伝えたのは、大空襲の被害だけが悲惨なのではなく、決して消えることのない「家族を失った悲しみ」だった。
「かつて富山にこのようなことがあったことを伝えておかなければいけない、今の繁栄はその上に築かれたものだから」

戦争を体験した人しか語れない重い言葉が、高校生たちに届けられた。
西田さんは「いま話すのもつらいと思うが、それでも知ってほしいという思いがあって来てくださったと思うので、空襲の話だけではなくて、空襲が終わった後のつらさも次の世代に伝える義務がある。体験者から聞くと重みがあって、伝える立場として責任を感じた」と話した。
平和とは何か、みんなで考える
誰もが悲惨と知りながらも、今も世界で戦争が繰り返されている現実がある。集会では「平和とは何か」「どうすれば戦争をなくすことができるのか」をグループで話し合った。

参加者からは「戦争は勝っても負けても悲しい人をつくるものだと思う」「戦争がなくなってほしいとは思うが、なくなることは難しいだろうな」「何年も前からあるウクライナとロシアの戦争、日本は平和だけど、世界は平和ではない」「世界中ずっと、同じ基準にして、平和にすることはきっと無理だと思う。その人たちの平和を守りつつ、発展することが一番平和」などの意見が出された。
薬師さんは「全員が答えが違う中でそれぞれができることをやっていく。そして身の回りの平和を広げていくことを目的にその第一歩になるようにきっかけづくりをした。この思いを少しずつ広げて戦後80年という節目の年だが、さらに平和について深く考え、平和を広めていくことを頑張りたい」と語った。
戦争を知らない世代が戦争を知ろうとする取り組み。平和に向けた「輪」が、少しずつ広がっている。輪音は、今年7月には富山大空襲の戦跡を巡るイベントも計画しているという。