2024年7月の大雨で甚大な被害があった酒田市大沢地区の一部の田んぼでは、田植えの時期を迎えた今も作付けできない状態が続いている。大雨から10カ月、大きな爪痕が残る被災地の現状を取材した。
(農業・相蘇弥さん)
「この道路の近辺は、うちの田んぼと委託を受けている田んぼ」
酒田市下青沢で農業を営む・相蘇弥さんは、複雑な思いで田植えの時期を迎えていた。
相蘇さんが住む大沢地区では、2024年7月の記録的な大雨で近くを流れる荒瀬川がはん濫した。
(農業・相蘇弥さん)
「被害は全部・全面積」
相蘇さんが管理していた7.1ヘクタールの田んぼは、土砂や流木が押し寄せ全滅。
3棟あった農業用ハウスや農業機械もすべて流されてしまった。
被災地でも復旧した田んぼで作付けが進む中、相蘇さんの田んぼは高さ約1メートルの土砂に埋まったままだ。
そして…。
(農業・相蘇弥さん)
「水が上のほうから下のほうに流れていたので、えぐれて勢いで土が持っていかれた」
農道を挟んで反対側は田んぼがえぐられ、水がたまっていた。
2024年に刈り取るはずだった稲も、そして流れ着いた大量の流木も手付かずのまま。
大沢地区では、豪雨前の作付面積約100ヘクタールのうち、約4割の田んぼでことしの作付けができない状態となっている。
市は、被災農地について2026年度までに順次復旧させたいとしているが…。
(農業・相蘇弥さん)
「公共債で直してくれるらしいが、あと2年で直るのかというのが正直なところ。業者もそんなに人数がいる感じでもないので、ちゃんと業者が見つかるのか不安」
被害があまりにも大きくどこまで元通りになるのか、復旧工事費の一部負担や農機具の購入など、考えることは山積み。
専業農家だった相蘇さんは、生活のため4月から市の集落支援員の仕事をしながら、農地の少しでも早い復旧を願っている。
(農業・相蘇弥さん)
「不思議な手持ち無沙汰な感じはある。せっかく農家をやっている身なので、ちゃんと作ってはいきたい」
相蘇さんは住宅も大規模半壊の被害にあった。
今は両親を市営住宅に仮住まいさせ、用心を兼ねて1人でこの家で暮らしている。
自分でできる範囲の応急処置を施したが、本格的な修繕工事はこれから。
(農業・相蘇弥さん)
「窓枠だけでも相当な金額になると思うので、多分全部は修繕できないかな。住まい何部屋か直せたらいいほうではないかと思う」
出来る限り直してこの家に住み続けるつもりだが、前を向ききれないもどかしさを抱えていた。
(農業・相蘇弥さん)
「若干気持ちが落ちてきたというのはある。河川がまだ安心できないところはあるので。直すつもりではいるが、不安がないといったらうそになる」
自宅裏の壊れた堤防は応急処置の段階で、これから来る梅雨の時期への不安もある。
全壊した農作業小屋は公費解体の対象だが、市が行った工事の入札は2回不成立に。
先週、入札参加業者との間で随意契約が結ばれたばかりだという。
(農業・相蘇弥さん)
「まだまだ一歩踏み出したか出してないかくらい。目に見えて復旧と言っても応急処置がほとんどなので、何とか気持ちが落ちないようにやっていくしかない」
大沢地区では高齢の人が多く、「2年後、3年後に自分が農業を続けられる状態にあるかどうか」と心配している人もいる。