粘土を使った造花「ラペリスフラワー」をご存じでしょうか。約50年にわたり制作活動を続けている秋田県八郎潟町の女性にラペリスフラワーへの思いを聞きました。
秋田市のアトリオンに並ぶ色とりどりの花。実はこの花「ラペリスフラワー」と呼ばれる造花なんです。石の粉と樹脂を混ぜた特殊な粘土で作られています。
繊細な花びらの曲線に、美しい色合い。果物のみずみずしさも見事に表現され、息をのむほどの精巧さです。
制作したのは八郎潟町の小野亮子さん(83)です。アトリオンで5月、4年ぶりの個展を開きました。
ラペリスフラワー作家・小野亮子さん:
「いまだかつてないほど一生懸命頑張りましたし、いらっしゃるお客さまが口々に『すごいね、すごいね』と言ってくれたことがうれしい」
小野さんは30代の頃にラペリスフラワーに出合い、その魅力に夢中になりました。その後は技術を磨いて県内や盛岡、仙台に教室を開き、約50年間、講師として働きながら国の内外の展示会に出品するなど、多忙な日々を過ごしました。80歳になって教室を閉じましたが、今は毎日のように作品作りに没頭しています。
6時間も7時間も作るという小野さん。「私はとにかく作ることが何より好き。作れば作るほどすてきな花ができるようになった」と話します。
小野さんは頭の中で植物をイメージして、それを作品にしています。この日は花びらや果物を作っていました。
花の個性や表情を表現するための大事な工程で、花びらの大きさや角度などを細かく調整。専用の型を使って葉っぱもリアルに表現します。
粘土が乾燥したら、粉末の塗料につやが出るうわぐすりなどを加えて塗っていきます。乾燥させて色を塗る…同じ作業を繰り返すことでつやが出て、優雅な質感が生まれます。
陶器のようになることから、焼かずにできる“陶器風の花”とも呼んでいるといいます。
1日でできる作品もあるそうですが、アトリオンの個展で展示したライラックやダリアは、完成まで半年かかりました。
ライラックは理想の紫色に仕上げるために、淡いピンク色をベースに色を5回塗り重ねました。
ダリアは最初に中央の細かい花びらを、次に大きめの花びらを作るなど、3段階に分けて制作。地道な作業の繰り返しでした。
美しいものを作るために小野さんが意識しているのは、旅をしたり音楽を聴いたりして感性を磨くこと。特に海外旅行が大好きで、旅先で見た花や風景、出会いからインスピレーションを受け、作品へとつながっています。
小野さんが次に作りたい作品は、フランスで見た画家・モネのジヴェルニーの庭です。「モネの庭に咲いているような数限りない色々な花を制作して楽しみたい」と語る小野さん。
これからも、小野さんの生み出す花の世界から目が離せません。