岩手県大船渡市に陸上展示されている木造船「気仙丸」などを建造してきた気仙地域の船大工集団「気仙船匠会」が、会員の高齢化などを理由に5月27日に解散の日を迎えました。35年の歴史に幕を下ろしました。

大船渡市の市街地に展示されている重厚感漂う木造船、全長18m、高さ5mの「気仙丸」です。

江戸時代の物流を担った千石船と呼ばれる船を1991年に復元したものです。

その造船にあたった気仙地域の船大工集団「気仙船匠会」は、高齢化などを理由に活動を終えることになり、大船渡市内で27日に会員3人の解散式が行われました。

気仙船匠会の副会長・菅野孝男さん81歳です。

2024年に93歳で亡くなった新沼留之進会長に代わり、大船渡商工会議所の米谷春夫会頭から感謝状を受け取りました。

菅野さんは27日、気仙丸とともに歩んだ気仙船匠会の35年の歴史をかみしめるように振り返りました。

気仙船匠会 菅野孝男副会長
「さまざまな活動に取り組み経験し、そして学び身についたことはすべてが宝であると思っております」

1990年に新沼会長ら13人の会員で発足した気仙船匠会。

その最大の目的は1992年に釜石市を主会場に開かれた「三陸・海の博覧会」に出展する気仙丸の造船でした。

この博覧会で気仙丸は最高賞に当たる「ジャパンエキスポ大賞」に選ばれ、気仙船匠会の技術が高く評価されました。

2011年には東日本大震災の津波で多くの漁船が壊滅的な被害を受けた中、市内の蛸ノ浦漁港に係留されていた気仙丸はほぼ無傷で見つかり、「奇跡の船」と呼ばれました。

気仙船匠会 新沼留之進会長(2011年インタビュー)
「この惨たんたる状況を見ると気仙丸もだめだと思った。健在な姿を見て安心している」

そして2020年、老朽化により陸に引き上げられた気仙丸は、陸上での展示に向け気仙船匠会が中心となり修復が行われました。

気仙船匠会 菅野孝男副会長(2020年インタビュー)
「エンジンもない、風の力を頼りに走った船だと、そう思って子どもたちに見てもらえばありがたい」

この翌年(2021年)からは現在(2025年5月)の場所に展示され復興のシンボルの一つとして街を見守っています。

今、菅野さんの頭をよぎるのは仲間とともに気仙丸の造船にあたった日々でした。

気仙船匠会 菅野孝男副会長
「船大工の一筋の道だったな。あの当時を思い出せばよく頑張った。みんなで一丸となったという思いがある」

気仙船匠会は27日をもって解散となりましたが、その技術の粋が集まった気仙丸は、造船にかけた匠の思いを未来に伝承していきます。

岩手めんこいテレビ
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