長野県松本市の老舗和菓子店が作る「バターサンド」。50年以上の歴史があるが、8年前、雑誌の特集で「日本一の手土産」に選ばれ、さらに人気となった。3代目店主は今も作り方を変えず味を守り続けている。

和菓子店で一番の人気商品は

わらび餅や桜もち、季節の上生菓子も。見た目も鮮やかな和菓子が並んでいる。

長年、地域から愛される和菓子店、松本市の「御菓子処 藤むら」だ。

「御菓子処 藤むら」
「御菓子処 藤むら」
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一番人気の商品を聞いてみると、御菓子処 藤むらの3代目店主・近藤智郷さんは「今一番出るのは『れぇずんくっきぃ』になりますかね」と話した。

「れぇずんくっきぃ」はクッキー生地にラムレーズンとバタークリームを挟んだシンプルな「バターサンド」の商品だ。

れぇずんくっきぃ(1個240円)
れぇずんくっきぃ(1個240円)

この日、訪れた客は「すごく人気と聞いて、前に食べた時すごくおいしかったので(来た)」、「レーズンがぷるんとしていて、クリームもミルキーでおいしいです」と話した。

連日、多くの人が買い求める「れぇずんくっきぃ」。50年以上の歴史があり、雑誌の特集では「日本一の手土産」にも選ばれた逸品だ。

東京での流行みて2代目が販売開始

「藤むら」は昭和13(1938)年に飯田市で創業した。市内の和菓子店で修業していた初代が、独立したのが始まりだ。

その後、昭和20年代には「戦後に心機一転したい」と松本市に店を移した。「れぇずんくっきぃ」は昭和40年代、2代目の近藤博やす(木へんに谷)さんの時代に販売を始めた。

御菓子処 藤むら 3代目店主・近藤智郷さん
御菓子処 藤むら 3代目店主・近藤智郷さん

近藤さんは「2代目の父が東京で修業をしてきて、その時、東京ではやっていたレーズンバターサンドをこちらで販売してみようと。昭和30~40年代、ちょうど冷凍・冷蔵技術が進化してきたところで、都市部の一部しかなかったケーキがどんどん地方に広がってきた。ケーキの需要も高まり、洋菓子も和菓子も(扱う)そういう形態のお菓子屋さんは昔、地方に多かったと聞いている」と話した。

「日本一の手土産」でグランプリ受賞

その後、「れぇずんくっきぃ」は和菓子とともに地元客から愛されてきた。そして、8年前、あることがきっかけで全国からも注目されるようになった。

2017年、情報誌が特集した「日本一の手土産」。バターサンド部門で見事、グランプリを受賞したのだ。

グランプリを受賞
グランプリを受賞

近藤さんは「雑誌に紹介されてから県外から問い合わせが来たり」と当時を振り返った。

上質なバター、自家仕込みのレーズン。「手作りのシンプル・イズ・ベスト」と評価された。

「味を守りたい」レシピは50年以上同じ

作り方は50年以上、変わっていない。

鉄板いっぱいに敷かれたクッキーの上に、バタークリームとラムレーズンを乗せていく。

近藤さんは「口どけのいい、フレッシュなバタークリームを目指している」と話した。

一つ一つ手作業
一つ一つ手作業

使っている材料のほとんどは店で仕込んでいる。バタークリームはたっぷりの国産バターを使い、上品で軽い口当たりに。ラムレーズンはラム酒がほのかに香るように仕込み、一つ一つ丁寧に手づくりしている。

20年前に3代目に代わったが、「味を守り続けたい」とレシピも変えていない。

バタークリームとラムレーズンの上にクッキー生地を乗せれば完成。

「れぇずんくっきぃ」
「れぇずんくっきぃ」

口に入れるとサクサクとしたクッキー生地に、軽めのクリームと、ラムレーズンの豊かな香りが広がる。

近藤さんは「技術が進んでいるので、こうすれば食感がよくなる、こういうものを入れれば長持ちするとかあるんですけど、そういうことをしないでレシピを守っていく。お客さんに『味が変わったよ』とか、そういうことを言われるのが一番残念なことなので」と話す。

「仕事の前にゲット」この日は昼過ぎに完売

味はもちろんだが、和菓子店らしく「和紙」で包んでいることも土産品として人気となっている。

取材したこの日も、県外からも多くの客が訪れていた。千葉県から出張中の男性は「前回も来たんが売り切れてしまって。近くに仕事で来て、先に『れぇずんくっきぃ』ゲットしてから、仕事は後回し」と話した。

神奈川から来たという親子は「友達が『すごくおいしくてレーズンがプルンとしていて、絶対食べてほしい』と。帰ってゆっくり松本の味を楽しみたい」と購入していった。

土産品としても人気
土産品としても人気

手土産用に購入した市内の男性は「きょうこれからお届けに行く。こちらから『れぇずんくっきぃ』持っていって、そしたら相手の方もお返しで(「れぇずんくっきぃ」を)用意してくれて、『同じでしたね』となったこともある」と話した。

手土産用に購入
手土産用に購入

この日は昼過ぎに完売した。

「日本一の手土産」にも選ばれた老舗和菓子店が作る「バターサンド」。

3代目はこれからも味を守り続ける。

御菓子処 藤むら(長野県松本市)
御菓子処 藤むら(長野県松本市)

近藤さんは「品切れとかにもかかわらず、たくさん(の客に)来ていただいているので、なるべく多くの人に足を運んでもらえるように頑張っていきたい。大切な人にプレゼントしたり、お茶でも紅茶でもお酒でもなんでも合わせていただいて、組み合わせを楽しんでいただけたら」と語る。

(長野放送)

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