新しいニーズを見極めることで、老舗ミシンメーカーが再び“一家に一台”を目指します。
「中身が丸見えだ」「小さい!」そう口々に話し、興味津々に目を輝かせる子どもたち。この日の小学校の授業で、子供たちの視線の先に置かれていたのは、老舗ミシンメーカー「アックスヤマザキ」の自信作です。
ミシンが一家に一台あったのは昔のこと。家庭用ミシンの販売台数は、2004年には42万台あったのに対し、2024年には3万5000台あまり(経産省「生産動態統計」より)。この20年で10分の1以下に減少しています。
そんな厳しい状況を切り抜けるべく、3代目の社長のバトンを渡された山崎一史さんは、主婦などに実際に話を聞き、ミシンの可能性を調査しました。
アックスヤマザキ・山崎一史社長:
小学校の時に(ミシンを)習って、うまくいかなくて挫折したと散々聞いてきた。ミシンの機構とか仕組みが分かって、学びながら楽しくできたらと。
小学5年生の家庭科の授業で使われていたのは、透明なミシン。使った子どもは、「(透明だから)縫っていたらボビンの動きが分かっておもしろかった」「おもちゃみたいでおもしろかった」などと話しました。
家庭科教員・西岡先生:
学校で使うミシンは、糸をかける時に中がどうなっているか分からないので、今回のように透明で見えると仕組みが分かってとっても良いと思う。
「子どものときに仕組みを理解して、楽しい体験を増やすことで、大人になってもミシンを日常的に使ってほしい」そんな思いから作られた透明なミシン。
アックスヤマザキでは、誰が何のために使うミシンなのか、ターゲットを明確に絞り込んで商品開発を行っています。
例えば、小学生になる前から使えるおもちゃのミシン(「毛糸ミシンふわもこHug ラベンダー」)に、つい押し入れにしまいがちなミシンを飾っておけるインテリアのような商品(「子育てにちょうどいいミシン」)のほか、孫に手作りをプレゼントしたい祖父母世代もターゲットにしたもの(「孫につくる、わたしにやさしいミシン」)も。
豊富なアイデアはどのように生まれるのか、社長の山崎さんに聞いてみると、「自分自身がミシンできない。僕以外、うちの会社にはみんなミシンのプロたちがしっかりいるので、やらない方にとって、どうやったら振り向いてもらえるのか」と語りました。
万人うけするミシンは求められていない。
個別のニーズを見極めることで、新たな市場を作り出せるといいます。
アックスヤマザキ・山崎一史社長:
昔は一家に一台ミシンが当たり前だったが、今はミシンがないところも多い。一つ一つ向き合っていけば、ちゃんと市場は創っていける。ミシンメーカーとして、新しいものを作っていきたいなと。