江戸時代に宿場町として栄えた大内宿は、福島県下郷町を代表する観光スポット。茅葺屋根の民家が建ち並ぶ風景は、まるで昔話の世界に迷い込んだかのような懐かしさを感じさせる。そこで味わえる絶品そばを紹介する。
■ 鬼ぐるみが生み出す幻の絶品そば
大内宿の名物グルメと言えば、箸の代わりに長ネギを使って食べる「ねぎそば」が有名だ。しかし、今回紹介するのは知る人ぞ知る隠れた名物、「くるみそば」である。
大内宿に約40ある民家のうち、このくるみそばを味わえるのは「金太郎そば山本屋」だけ。築約200年の江戸時代から残る建物で、店主の鈴木忍さんが丹精込めて作り上げている。
くるみそばの特徴は、つけダレに使用される「鬼ぐるみ」だ。鬼ぐるみは地元・会津に自生している山ぐるみの一種で、今はほとんど市場に出回らない幻の品種とも言われている。ゴツゴツした見た目と、殻の硬さから「鬼」の名が付けられたという。
■ 手間暇かけた伝統の味
鈴木さんは「大内宿では、昔からお祝い事があると鬼ぐるみをすってそばつゆに混ぜて食べる習慣があった」と語る。その伝統を受け継ぎ提供するのが、このくるみそばなのだ。
鬼ぐるみの加工は非常に手間がかかる。殻が硬く割るのが難しい上、中身を取り出すのも一苦労だ。鈴木さんは「一日中作業しても、取れる量は約300グラム。これは20人前に相当する量」と説明する。
そばも南会津産のそばの実を使った自家製の手打ちそばにこだわっている。鈴木さんは「手作りじゃないとこの舌ざわり、つぶつぶ感は出ない」と、手作業にこだわる理由を語る。
実際に食べてみると、濃厚でありながらも甘みがあり、くるみのツブツブとした食感が楽しめる。そばの存在感も負けておらず、絶妙なバランスが取れている。
鈴木さんは今後の展望について「鬼ぐるみは初めて食べた時においしいと思ったので、この味をずっと守っていきたい」と語る。手作りで大変な作業だが、楽しんで取り組む姿勢が伝わってくる。
会津の自然が育んだ希少な鬼ぐるみと、それを手間暇かけて仕上げる鈴木さんの情熱が詰まったくるみそば。大内宿を訪れた際は、ぜひ一度味わってみてはいかがだろうか。
<金太郎そば山本屋>
福島県下郷町大内山本15
【営業時間】飲食 午前11:00~午後3:00※なくなり次第終了/土産 午前9:30~午後4時ごろ
【定休日】不定休