神戸市で起きた連続児童殺傷事件で、土師淳君が殺害されてから、5月24日で28年です。

父・土師守さん(69)が手記を公表し、加害男性への胸の内を明かしました。

■「神戸連続児童殺傷事件」当時14歳の男子中学生が土師淳君を殺害

【淳君の父・守さんの手記より】
「今年の5月24日は、私たちの次男の28回目の命日になります。私たち家族の次男への思いは、28年という年月が経過しても変わることはありません。」

1997年5月24日、小学6年だった土師淳君(当時11歳)が、神戸市須磨区で、当時14歳の男子中学生に殺害されました。

中学校の校門前に頭部が置かれ、事件は世間を震撼させました。

■「なぜ命が奪われたのか」“告白本”出版後に加害者からの手紙は届かなくなり…

当時の少年法で14歳は刑罰の対象にならないため、加害者は医療少年院に送られました。

この処分を決めた少年審判は非公開で、当時は遺族が全く関わることができなかったため、守さんたち遺族は、「なぜ淳君の命が奪われたのか」を全く知ることはできませんでした。

加害者は2004年に仮退院してからは、毎年謝罪の手紙を遺族に送るようになっていましたが、10年前、遺族に無断で事件についての「告白本」を出版。

その3年後から手紙は届かなくなりました。

淳君の父・土師守さんは24日手記を公表し、加害者からの手紙が「今年も届かなかった」と明かすとともに、加害者への思いを訴えました。

【淳君の父・守さんの手記より】
「加害男性からの手紙は今年も届くことはありませんでした。

私たちの子供が、何故、加害男性に大事な生命を奪われなければいけなかったのかを知ることは、親としての責務だと思っています。

加害男性には、自分が犯した事件に真摯に向き合ったうえで、私たちの思いに答えるような対応をして欲しいと思います」

■「息子のためにも」「同じように犯罪被害で苦しむ人がでないように」取り組んできた被害者の権利獲得・支援制度のさらなる拡充訴え

また守さんは、「息子のためにも」「同じように犯罪被害で苦しむ人がでないように」と犯罪被害者の権利獲得、支援制度の拡充に取り組んできました。

手記では兵庫県が都道府県では例が少ない、「見舞金」を去年から支給していることを取り上げ、さらに全国に広がってほしいと述べています。

【淳君の父・守さんの手記より】
「兵庫県で犯罪被害者等支援条例が一昨年に施行され、昨年度からは見舞金の支給制度が開始されました。

事件後に、犯罪被害者、遺族は経済的に困窮する場合が多くみられるため、地方公共団体の見舞金制度は非常に恩恵のある制度だといえます。

見舞金制度を制定している市町村はかなり増えていますが、金額的には充分と言えず、市町村に加えて都道府県が見舞金制度を制定することで、被害者の状況の改善につながります。

しかしながら見舞金制度を制定している都道府県はいまだに少なく、そのような状況で兵庫県が見舞金制度を制定した意義は大きく、他の都道府県にも拡がって欲しいと思っています」

■「あすの会」でともに活動した岡村勲弁護士は死去「可能な範囲で引き継いでいければ」

そして、自身も参加して犯罪被害者の権利確立に向けて活動してきた、全国犯罪被害者の会=あすの会の代表だった岡村勲弁護士が死去したことについて、次のように述べました。

【淳君の父・守さんの手記より】
「犯罪被害者の権利確立を目指した活動を、強いリーダーシップで主導してきた岡村勲弁護士が今年2月に逝去されました。

2000年1月の『あすの会』の設立後、岡村先生は先頭に立って活動しました。

その結果、2004年には犯罪被害者等基本法が成立し、それ以降も被害者参加制度や犯給法、少年法の改正の成立など多くの成果を残し、犯罪被害者を取り巻く環境は大きく改善しました。

一旦あすの会は解散しましたが、重要課題である経済補償の問題の改善が見られなかったことに危機感を憶えた岡村先生は、2022年3月に『新あすの会』を立ち上げ、昨年には犯給金の大幅な増加が決定されました。

まだ重要な課題は残っており、そのような状況で岡村先生が亡くなられた影響は非常に大きいと思いますが、残されたメンバーで岡村先生の遺志を可能な範囲で引き継いでいくことができればと思っています。

犯罪被害は決して他人事ではありません。

今後、一般の方々の理解がすすみ、犯罪被害者を取り巻く環境が更に改善することを願っています」

(関西テレビ 2025年5月24日)

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