自宅の売却と同時に賃貸借契約を結び、同じ家に住み続ける「住宅のリースバック」に関する相談が増加している。2024年度の相談件数は200件を超え、契約者の7割超が70歳以上の高齢者だった。こうしたことから高齢者が終のすみかを失う深刻なトラブルに発展しかねないとして国民生活センターが注意を呼びかけた。
相談内容は「何時間も勧誘され続けた」「マンションを売るよう執拗に勧誘された」という“勧誘”に関するものが目立つ。その際、強引な勧誘により、よく考えたり比較したりする時間を与えられず契約させられているケースがあるという。
具体的には、朝10 時から夜10 時過ぎまで長時間勧誘され契約書にサインしたが、「売却価格が安い」と後日親族に指摘され解約の連絡をしたものの「手付金50 万円の返金と、違約金50 万円の支払い」を要求された。契約書に違約金の記載はあるが勧誘時に説明されておらず納得できないというもの。
他にも、認知症の父が相場より安価な売却額でリースバック契約を結んだが自宅を取り戻したいという相談や、「売却後もそのまま住み続けられる」と説明され契約したが、家賃が値上げされ支払えなくなった深刻なケースもみられた。
また、認知症など判断能力が低下していると思われる高齢者がリースバック契約のトラブルにあったという事例も複数寄せられているという。
一方で、契約には至らずとも「不動産業者からの突然の勧誘が迷惑」「断ったにもかかわらず再度勧誘されて迷惑だ」という相談も多数寄せられている。
契約当事者の約7割が70 歳以上
2024年度は200件を超える相談が寄せられており、そのうち70歳代が59件で26.8%、80歳代が91件で41.4%、90歳代が13件で5.9%となっている。
国民生活センターは、不動産業者から勧誘電話がかかってきても、安易に訪問を許可せず、自宅を売却するつもりがない場合は、「自宅は売らない」「契約はしない」と、売却の意思がないことを明確に伝えることが必要だとし、通話録音を使うことなども有効だとしている。
また、不動産業者に自宅を売却するとクーリング・オフが適用されないため、契約成立後は無条件で契約を解除できないことや、手付け解除が可能な期間を過ぎると違約金が必要なため注意が必要だとしている。
さらに、リースバック契約は売却後も無条件でそのまま住み続けられるものではなく、家賃が支払えなくなれば退去しなければならないことも踏まえ、慎重な契約が必要となる。
国民生活センターは、高齢者を守るためには、まわりの人が変化に気づくことが重要だとし、気づいたらできるだけ早く相談を持ちかけるよう呼びかけている。