日本で新たに事業を起こすことを前提に、事務所を確保して500万円以上の資本金など条件を満たせば、最長5年在留できる「経営・管理ビザ」

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本来は、日本国内で事業経営を行う外国人を広く迎え入れるための制度ですが、今、この制度を“悪用”した中国人の移住が増えているといいます。

「経営・管理ビザ」を保有している在留中国人は、2015年6月時点では7318人でしたが、2024年6月には2万551人に増加。「経営・管理ビザ」保有者の約半分が中国人です。

3月の国会でも、日本維新の会の柳ケ瀬裕文参院議員が「経営・管理ビザの問題です。中国では非常に有名で、日本で会社を作れば、高額医療をタダ同然で受けられると宣伝されています」と指摘。

実際に、中国のSNSには「日本へ移住したい場合、最も簡単な方法は、『経営・管理ビザ』です」「日本に定住できて日本国民と同じような医療を受けられます」といった、経営・管理ビザを取得することで、日本人と同じように医療も受けられるとPRする動画が複数確認できました。

大阪で「経営・管理ビザ」取得をサポートしている行政書士法人「クローバー法律事務所」は、現状をこう話します。

行政書士法人クローバー法律事務所 大山悠太氏:
経営・管理ビザに関する相談は8割ぐらいが中国人の方です。事業計画がある人もいますが、大半は要件を満たさず無計画で、私たちも問題視しています。

こちらの事務所では、中国人スタッフによる通訳・翻訳を経由して事実確認を徹底し、移住だけを目的としたビザの取得については断っているといいます。

1つのビルに49社 人の出入りなし…

中国社会を研究してきた阪南大学の松村嘉久教授によると、大阪市内で2015年以降に「経営・管理ビザ」を得るために必要な最低額の資本金500万円で設立された中国系の企業は、少なくとも2600件。

一つの建物に複数の会社が集まっていることも少なくないといい、「サン!シャイン」はその中のひとつ、実に49社もの中国系の会社が入っているというビルに行ってみました。

大阪市内にある、49社の中国系企業が入っているビル
大阪市内にある、49社の中国系企業が入っているビル

市内にひっそりと建つ細長いビル。窓から見えるオフィスには、椅子と机が置いてあるのみで、パソコンなどは確認できません。

人の気配はなく、机と椅子が置いてあるのみ
人の気配はなく、机と椅子が置いてあるのみ

49社もの会社が入っているにもかかわらず、取材中にビルを出入りする人は確認できませんでした。

阪南大学 松村嘉久教授:
経営実態はないと思いますよね。たぶん人の出入りしている気配もないんで、だからそういう意味で言うと本当文字通りペーパーカンパニーだと思いますね。
経営・管理ビザを取得するために、民泊の運営法人を設立し移住するという手段が、中国人の間で広まっているのではないか。

国民健康保険料を滞納のまま帰国…高額医療費免除が目的か?

なぜここまでして、中国人が「経営・管理ビザ」の取得を行うのか。
中国の社会事情に詳しいジャーナリストの中島恵氏によると、中国人移住の背景には、中国経済への不安や、子どもの教育のためなど様々な理由があるといいます。

また、ジャーナリストの姫田小夏氏によると、経営目的と偽りビザを取得したのち、日本の国民健康保険に加入。
日本で高額な治療を受けて「高額療養費制度」を利用し、自己負担を抑えるといったケースがあるといいます。中には、中国から親族を日本に呼び、何度も治療させた事例も…。

さらに、国民健康保険料を滞納したまま、帰国してしまうケースもあったということです。

実際に、5月19日の参院予算委員会でも、日本維新の会の柳ケ瀬裕文参院議員が、現在統計データからあくまでも仮定とした上で「全国の自治体を合算すると、年間4000億円以上の国保が外国人によって納付されていない」と指摘。
厚労省によると、全国150市区町村で調査を行った結果、国内在住の外国人による国民健康保険料の納付率は63%、未納率は37%でした。

今後も、「経営・管理ビザ」取得による移住者は増えていくのか、また「経営・管理ビザ」の取得者が増えることでどのような影響があるのでしょうか。

中国の社会事情に詳しい ジャーナリスト 中島恵氏:
良い点としては、日本で経済活動をしてくれるので、日本の経済の活性化にもつながるということですね。人口も増えますしそういう点はあると思います。
一方でこれだけ、1つの都道府県くらいの人口の中国人が集まってしまいますと、中国人同士で色々なことが成り立ってしまって、そのビジネスの中に日本人が介在しないことになります。中国人だけでお金儲けをしてしまったり、コミュニケーションしてしまうので…。最近来られる方は日本語もできませんし、以前からいる中国人を頼って生活しているので、日本のマナーを理解しなかったり、日本に対してのリスペクトが少なかったりと、そういった心配はあります。
(「サン!シャイン」 5月21日放送)