警察官を名乗るニセ電話詐欺があとを絶たない。福岡県内の被害額は、2025年3月末時点で9億円近くに上っている。どう被害を防げばよいのか。実際の音声を入手した。
実際にかかってきた電話の通話記録
5月9日、昼前に福岡市早良区に住む女性にかかってきたニセ電話詐欺の音声。

▼犯人「私は、警視庁捜査2課のササキマサタカと申します」
▼女性「ササキ、マサタカさん」
▼犯人「内容が内容なので、お時間をとっていただく必要がある」

警視庁捜査2課の捜査員『ササキマサタカ』を名乗った男。表示された電話番号は『+876』。カリブ海に浮かぶジャマイカからかかってきた国際電話とみられる。

「すぐ詐欺だと分かったので」と記者のインタビューに応える女性。警察官を名乗る詐欺があることをニュースで知っていたという。詐欺と分かりながら話に付き合ったのだ。詐欺電話と見破られていることに気付いていないニセの捜査員のササキは話を続けた。

▼ササキと名乗る男「で、内容なんですけど、今回、兵庫県警で『××××』という人物を主犯格とする詐欺グループの事件の捜査を進めていまして」
▼女性「はいはい」

▼ササキと名乗る男「この××××を逮捕するにあたり家宅捜索したところ、大量の他人名義の口座と携帯電話を押収している。そのなかの1枚に××さんの名義の楽天銀行の口座も含まれていて、兵庫県警の方で××さんが『××××グループ』資金洗浄に加担しているのではないかという詐欺容疑がかかっている」
▼女性「はいはい」
▼ササキと名乗る男「兵庫県警の方までお越し頂いて、直接お話させて下さいというお話なんですけど」
▼女性「ああ、なるほどですね」
日本の法律にはない”秘密漏洩罪”
女性に対して「詐欺の容疑がかかっている」「兵庫県警に来てほしい」と伝えたニセの捜査員のササキ。当然、女性はこの申し出を断った。

▼女性「え~と、兵庫県警。すぐには行けない。一度、主人と連絡をとってもいいですか?」
▼ササキと名乗る男「あっ、こちらが、第三者の方にお伝えすることが出来ない事件の内容なんですよ」
▼女性「はいはい」
▼ササキと名乗る男「で、こちらがですね、”秘密漏洩罪”というのがかかってきてしまうので、お伝えした方にも罪がのしかかってしまう可能性がある」

ニセの捜査員のササキは”秘密漏洩罪”という日本の法律にはない罪名を持ち出し、女性を脅してきた。

「『秘密漏洩罪?』と素直に思いました。ハテナと。聞いたことがないな?と思って]とインタビューに応える女性。言っていることが支離滅裂無茶苦茶だと思った女性は「いま、職場の方に顧問弁護士が来ているので」と嘘をそれらしく伝えた。

▼ササキと名乗る男「はい?」
▼女性「どうしようかな?ササキさんでしたっけ?」

顧問弁護士が来ていると聞きニセの捜査員のササキは焦ったようだが、それでも電話を切ろうとはしない。

▼ササキと名乗る男性「ご都合のいいお時間をお聞きして再度、折り返しさせて頂ければなと思うが…」
▼女性「きょうは、ちょっと業者も入って結構、忙しい日なんですよ」
▼ササキと名乗る男性「ああ、そうなんですね。本日、お電話でお時間をとって頂ければなと思っている」
▼女性「こっちも時間の目途がたたない。もしかしたら午後9時とかになるが大丈夫か?夜はダメですか?」
▼ササキと名乗る男性「ちょっとですね、私のほうが“別の捜査”も進めていますので。あと、この事件が大きい事件ですので“他の捜査対象者”もいるので、そちらを対応している可能性があるんですよ」

夜の対応を嫌がるようすを見せたニセの捜査員のササキ。勤務時間が決まっているのか。
▼ササキと名乗る男「分かりました!で、あればですね(警視庁に)再度、折り返し頂ければなと思います。捜査2課のササキに繋いでくださいと伝えて頂ければ、私が電話で対応しますので」
▼女性「分かりました。すみません」
着信から7分。ニセの捜査員のササキは、ようやく電話を切った。女性はすぐさま警察に通報した。

もし女性が詐欺と気づかなったら、どうなっていたのか。福岡県警によると詐欺犯は騙せると踏んだ相手を無料通信アプリ「LINE」などに誘導。ビデオ通話などで嘘の取調べを行い「資金を調査するから指定した口座に金を振り込め」などと要求してくるという。
“堂々と対応する”対処法で撃退
増加傾向にある警察官をかたる詐欺。特殊詐欺に詳しいジャーナリストの花田庚彦さんは「大概の人間は警察から電話がかかってきたら驚くと思う。だけど自分にやましいことがないなら『警察に来い』と言われたら『行きます』で大丈夫。堂々としていればいい」

「焦っていないで堂々としていれば『こいつから金は引っ張れない』と思って諦めます。向こうも騙し取った金額の何%しか貰えないので。1人の人間に執着しないで、名簿があるので、次の人に電話した方がいいと割り切る」と誰にもできる簡単な対処法を話す。

2025年3月末時点で、福岡県内で起きた警察官を騙る詐欺は74件。被害総額は8億7千万円にも上る。

福岡県警は警察官を騙る詐欺について「警察官がSNSで事件の内容を伝えることはなく、捜査のためにお金を送金させることもありません」と注意を呼びかけている。
(テレビ西日本)