岐阜県美濃市の小学校では、1年生と2年生の通知表が廃止されることになりました。子供の学習状況や生活の様子を評価する通知表ですが、廃止した理由やその意味について話を聞きました。
■市民からは驚きの声も「一瞬『ウソでしょ』と」
岐阜県美濃市では、2025年春から小学1年生、2026年度以降には1・2年生の通知表が廃止となりました。

美濃市民A:
すごいことが始まるなと思って。一瞬「うそでしょ」と思ったんですけれども。
美濃市民B:
全国的にも、そういうのをチョイスする所があってもいいんじゃないかなと思います。
■低学年での限定的な廃止を決めた理由は
美濃市の小学1年生の通知表では、評価されるのは主に国語・算数などの「学習面」と、自主性などの「生活面」です。
「学習面」では、知識や思考力、学びに向かう力など3つの観点に分けて、二重丸・丸・三角で評価しています。

一般的な通知表と変わらないように見えますが、廃止を決めた理由について、市の教育長に話を聞きました。
美濃市教育委員会の島田昌紀教育長:
子供が何に注目するかというと、例えば「◎」があったかどうか、「△」があったかどうか、いくつあったとか、他の子よりも多いか少ないかとか。特に低学年の発達段階を考えると、そういったところに着目しがち。劣等感を感じて自信や意欲を失うことがないように。仲間関係の序列につながらないようにということが大きな目的です。

幼稚園などから小学校に上がったばかりの子供たちに、勉強への苦手意識や劣等感を抱かせないようにする狙いがあるといいます。
また、通知表の評価の欄は、“保護者向け”の難しい言葉が並んでいて、低学年の子供が理解することが難しいことも理由に挙げます。
<国語の3つの観点の1つ>
「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」の各領域において、順序立てて考える力や感じたり想像したりする力を養い…
美濃市教育委員会の島田昌紀教育長:
これは保護者向けの文章ですので、漢字もたくさん使ってありますし、子供にとっては難しい。

通知表は、各学校の校長が実施や様式などをどうするか決める権限を持っていて、美濃市では今回、全ての小学校の校長が同意し、廃止を決めました。
代わりに、7月と12月に保護者との個別懇談で、口頭で学習や生活状況を伝えるほか、学年末に渡す「修了証」と共に、1年間の所見を書くことになりました。
■保護者の声は…「元気に行ってもらえれば」「競争心湧いた方が」
通知表の廃止について、保護者からは様々な声が聞かれました。
1年生の保護者:
全然ぴんと来ていなくて。1・2年生はもらわないけど、3年生からその状態がくるから、結果的にもらうことには変わりないから、その辺はどうなのかなと思いますね。
年少と2年生の保護者:
1・2年生のうちは元気に学校に行ってもらえればそれでいいですし、一生懸命やっていれば、それがその子のやり方なので。成績で評価をつけてもらわなくても、毎日元気に行ってくれれば、それで十分かなと思っている。
4年生の保護者:
あった方がいいなと思います。比べて競争心が湧いた方がいいんじゃないかと。今は運動会も順位をつけないとかあるので。ちょっと周りと競争して頑張った方が、もっと成長するんじゃないかなと思います。
低学年の通知表の廃止について、学校問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授に話を聞きました。

名古屋大学大学院の内田良教授:
まずしっかりと押さえておかなければいけないのが、小学校1・2年生に限定した取り組み。「小1プロブレム」と呼ばれたりもするんですけれども、保育所・幼稚園でのびのびと育ってきた子供が、小学校1年生になって勉強をさせられるような感覚。そこに評価が加わることで劣等感・優越感、序列化が進むわけです。そこで学校への不適合を起こす子供たちもいます。低学年については、そこまで通知表の評価は意味があるのかと、全国に問う取り組みだなと思います。
(東海テレビ)