まだ食べられるのに処分される果物をアップサイクルしたドライフルーツ。手塩にかけて育てた作物を無駄にしたくないという、農家の思いが込められています。

仙台市太白区秋保町にある秋保ワイナリーで開かれた試飲会。振る舞われたのは、ワインとドライフルーツやスパイスを合わせたサングリアです。

味わった人は
「フルーツの味がすごく染み出ていておいしかったです。お休みのぜいたくしたい時とか、明日友達と会うのでプレゼントも良いかなと思った」
「フルーティーですごくおいしかったです。見た目もすごくきれいなので、規格外という感じは全然しない」

このサングリアに使われている、オレンジやりんごのドライフルーツ。実はこれらは、形が悪いなどの理由で出荷できない規格外品や、スーパーでまだ食べられるのに見切り品となったものをアップサイクルしています。このドライフルーツを作っているのが、山寺豪さん(53)です。秋保町でブルーベリー農園を営む山寺さんは、おととしからドライフルーツを生産していて、約30種類の商品を販売しています。

ブルーブルーベリーファーム 山寺豪さん
「いろんな農家さんと話す機会があって、そうすると、相談する農家さん、ブルーベリー農家に限らないんですけど、結構、作りすぎて廃棄とか、形が合わなくて売れないとかあって。自分が農家になってみて、こんなに大変な作業をしているのに、捨てるとかお金にならないって、すごく悲しいなと思った」

実は山寺さんが農業を始めたのは4年前。これまで農業の経験はなく、サラリーマンからの転身です。東京の情報関連機器メーカーで約20年、営業として働いていた山寺さんは、転職して故郷・仙台に戻り、会社員として働きながら、夢だった農業を始めました。農業を始めたからこそ、廃棄されてしまう作物を有効活用したいという思いがより強くなりました。

ブルーブルーベリーファーム 山寺豪さん
「ブルーベリーって1年に1回しか収穫できないので、1年間かけてやっと夏にとれたのに、それが捨てる、売れない、食べてもらえないっていうのは、やっぱり悲しいですよね。
ドライフルーツだったらなんでも元の形関係なく乾燥して、しかも乾燥すると、味がぎゅっと濃縮されるので、おいしいドライフルーツを、いろんな農家さんから捨てるものでもいいから集めて作れるかなって思って、そこからいろいろ準備を始めた」

この日は、同じ秋保町にある農園へ、乾燥させる野菜を買い取りに向かいました。買い取ったのは「ヤーコン」。30キロあります。小さかったり、形が悪かったりといった規格外品です。こうしたものは、知り合いにあげたり、直売所で安く売ったりするといいますが、余ってしまえば、最終的には捨てられてしまいます。

くまっこ農園 渡辺重貴代表
「なんていうか、悲しいというか、やるせないというか。あまり見ないようにして捨てます」

山寺さんの活動は、作物を無駄にしないだけでなく、農家の仕事の効率アップにも貢献しているようです。

くまっこ農園 渡辺重貴代表
「助かっていますよ。正規品を出荷するだけでも結構時間がかかっていっぱいいっぱいで、規格外品まで手が回らない時に取りに来ていただけると、すごくスッキリして。全部持っていってくれた、助かったみたいな感じで」

山寺さんはこの農園のほか、県内を中心に15の農家と取引をしていて、さまざまな作物を買い取っています。また、取引先は農家だけではありません。泉区寺岡にあるスーパー。おいしそうな旬の果物が並びます。こちらの店からは、傷が付いてしまって店頭に置けなくなった「見切り品」の果物を、ドライフルーツの材料として買い取っています。

フードマーケットフジサキ 佐々木修店長
「本当に傷が付いているだけで、中身の味には問題のない商品でしたので、それが新たな商品に生まれ変わってまたお店で販売できるということで、よい環境の循環ができていくんじゃないかという事は実感しています」

見切り品や規格外品とはいっても、もちろんおいしさは変わりません。

高橋咲良アナウンサー
「いただきます。しっとりとした食感。そして何より、甘みが強い。とてもうまみが凝縮されていますね」

ブルーブルーベリーファーム 山寺豪さん
「砂糖を使っていないので罪悪感なく、甘い果物を食べていただけると思っている。そのまま食べても良いですし、お茶とか、ヨーグルトとか、何かと混ぜても使えると思うので、いろいろな楽しみ方を考えて楽しんでもらえれば」

山寺さんはこれからも、身の回りの「もったいない」に注目していきたいと話します。

ブルーブルーベリーファーム 山寺豪さん
「もったいないっていうのを、なくしていければなと思っていて。規格外とか捨てられるものから、ドライフルーツにするのもそうですし。今、ブルーベリー畑でブルーベリーを育てていますけど、あそこも元々田んぼをやめて10年以上経って、もう雑草だらけの、いわゆるもったいない土地だったんですね。いろんな観点で見た時のもったいないを、1人でやっているので限界はありますけど、そういうきっかけを作っていければと思っています」

仙台放送
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