アメリカのトランプ大統領は、就任から100日を迎えた29日の演説で、「歴史上最高のスタート」と自賛した。一方、世論調査では支持率39%と歴代最低水準となっている。専門家はアメリカファーストの大統領の政策が内政・外交とも、むしろ逆効果になっていると懸念を示す。
成果を叫ぶ一方で揺らぐ政権の足元
アメリカのトランプ大統領が29日、2期目の就任から100日となり、「歴史上最高のスタート」だと自信を示した。

アメリカ・トランプ大統領:
歴史上最高のスタートだと言われている。歴代大統領の100日間のスタートとして最高だ。誰もが「始まったばかりだ」と言っている。

トランプ氏は中西部ミシガン州で演説し、「不法入国者が99.999%減少した」、「アメリカの黄金時代を築きつつある」と、強硬な不法移民対策などの成果を強調した。

また、ミシガン州が世界的な自動車メーカーの本拠地があることから、「私は労働者のための大統領だ」と自信を見せた。

一方、交渉が難航している、ロシアとウクライナの停戦協議などには言及しなかった。

ABCテレビなどが行った世論調査では、就任後100日の支持率は39%で、第二次世界大戦後で最も低いと伝えられているが、「世論調査が不正に行われている」と持論を展開した。

トランプ氏は今後、大規模な減税を行い国民に支持を訴えるが、逆風は強まっている。
実績なき強硬…揺らぐ“アメリカファースト”の現実
「Live News α」では、津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を聞いた。
堤礼実キャスター:
政権発足から100日を迎えたトランプ大統領、茅野さんはどうご覧になりますか?

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
トランプ大統領が、演説の大部分を不法移民対策に割いたのは、現時点でそれしか成果を示せるものがなかったからではないでしょうか。
例えばウクライナとロシアの戦争で、トランプ氏は「大統領に就任したら、すぐに停戦を実現できる」と豪語していましたが、停戦交渉は難航しています。
相互関税についても、金融市場の動揺を受けて、すぐに90日間停止すると発表しました。
堤キャスター:
今のアメリカの、何を問題としているんでしょうか?
津田塾大学教授・萱野稔人さん:
トランプ大統領の問題意識は、ある意味明確なんです。
まず、経済において、これまでアメリカが借金をして世界中から物を買うことで世界貿易が成り立ってきたという認識があります。
また、安全保障においては、アメリカが世界の警察として自分たちを犠牲にすることで世界秩序が成り立ってきた、そんな認識があるんです。
こうしたことをもうやめようというのが、アメリカファーストの中身です。
中国警戒と減税戦略の裏で進む国際的孤立
堤キャスター:
具体的にどういったことを狙ってるんでしょうか?

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
トランプ大統領からすれば、アメリカが世界の犠牲となることでアメリカの力が削がれて、その間に中国が台頭して、アメリカの地位を脅かそうとしているわけです。
そのため、アメリカの負担を軽くすることで国民への減税を実現して、さらには中国の台頭を抑え込むことが狙いです。
しばしばトランプ大統領の狙いとして、製造業の国内回帰ばかりが強調されますが、それはこうした大きな問題意識の一部に過ぎないです。
堤キャスター:
ただ、トランプ大統領によって世界が混乱しているようにも思いますが、これについてはいかがですか?
津田塾大学教授・萱野稔人さん:
トランプ大統領の政策は、自身の問題意識とは逆の効果を及ぼしてしまっています。
例えば、関税政策はウォール街の株安やアメリカ国債の価格低下など、国外に資金が流出する事態を招いてしまいました。また安全保障政策は、ヨーロッパの同盟国などのアメリカ離れを促してしまっています。
こうしたアメリカ離れは経済においても、安全保障においてもアメリカの一層の地位低下に繋がりかねません。その“上手くいなかなさ”に対する、トランプ大統領の焦りが垣間見えたような演説でした。
(「Live News α」4月30日放送分より)