幼い頃から自宅の目の前を走る列車を眺めて過ごし、大学生になったいまも通学で利用する…慣れ親しんだ地域鉄道への“愛”を形にした大学生がいる。福井鉄道の鯖江周辺の路線を再現し、レールを走る福鉄の車両もすべて手作りして完成させた巨大なプラレールが。福井県鯖江市内のギャラリーに展示されている。
地域鉄道への“愛”を巨大プラレールに
福井鉄道の西鯖江駅に併設されたギャラリーに入ると、部屋を埋め尽くす程大きなプラレールが展示されている。よく見ると、神明駅や西山公園駅など福井鉄道の駅も。

すべて、鯖江市内に住む福井工業大学4年の吉村瞬さんが手掛けた。鯖江市民から使わなくなったプラレールを寄付してもらって制作し「今は販売していないパーツもあり、楽しめるレイアウトになっている」という。

車両はすべて手作り
こだわりはレールを走る福井鉄道の車両。「“新旧”車両、引退した車両も新型車両も走っていているのが魅力」と笑顔を見せる吉村さん。車両はすべて手作りで「プラレール用に図面をひいて、それに合わせてプラスチックの板を削り塗装してシールを貼って一つの作品に仕上げる」という。

“オンリーワン”に憧れ制作開始
吉村さんが鉄道の車両を作り始めたのは中学生の頃。ものづくりのイベントで福井鉄道のブースを訪れた際、販売していない車両があるのを見つけてブースの人に聞いたところ「作った人がいるんだよ」と言われ、衝撃を受けたという。以来、自分でも車両を作るようになった。「自分で作るとオンリーワンの作品ができる」と目を輝かせる。

地元の鯖江を再現
そこから没頭したのはNゲージのジオラマ。沿線の山に設置された“眼鏡のまち鯖江”を象徴する看板やハピラインの車両も、すべて手作り。リモコンを操作すると、列車が鯖江の町を走る。

5月3日、4日に一般公開
吉村さんは今回のゴールデンウィークに合わせ、新たに3台の車両を仕上げた。福井鉄道の歴史を垣間見ることができる車両だ。「770形という車両は、今はこのカラーリングでは走っていない。元々は岐阜で走っていた真っ赤な車両を結構リアルに作れたんじゃないかな」と誇らしげに話す。

手作りの福井鉄道の車両はこれで18台になった。自宅の目の前を福井鉄道が走る光景を見て育ち、今も通学には福井鉄道を利用している。吉村さんの福鉄への愛着は人一倍だ。「楽しく福井鉄道を知ってもらうきっかけができたかな、と思うと夢が叶った。県内外の人に知ってもらいたい」と話している。

西鯖江駅のギャラリーは、29日と5月3日、4日に一般開放される。
吉村さんは現在大学4年生で、卒業後は家業の畳店を4代目として継ぐことになっている。一つ一つ手作りでオンリーワンのものが仕上がる畳。「鉄道車両作りともつながっているように感じている」と話している。
