トランプ大統領の3選への意欲を公にするように、このほど同大統領のショップ「トランプ・ストア」から「トランプ2028」とデザインした帽子が売り出された。

“トランプ2028帽子”発売開始…その意味は

ストアのウェブサイト「trumpstore.com」に掲載された写真によれば、帽子そのものはトランプ大統領が自身のトレードマークのように使っている赤い帽子と同じで、「Make America Great Again(アメリカを再び偉大に)」の代わりに「トランプ2028」と正面に大きく白地でデザインされている。値段は50ドル(約7500円)で、サイトにはこう説明がある。

オンラインストアに掲載された新しいデザインの帽子
オンラインストアに掲載された新しいデザインの帽子
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「未来は明るい!トランプ2028ハイクラウンキャップで、新たな時代を先取りしませんか?
 堂々と刺繍されたロゴと、サイドにあしらわれた星条旗が、あなたのスタイルに圧倒的な存在感をプラス。
スナップ式バッククロージャーで、快適なフィット感も実現。普段使いにも特別な日にも活躍する、手放せない一品です」

さらに購買欲をそそるようにこうともある。

「ただいま大好評につき、発送までに10~14営業日ほどお時間をいただく場合がございます。ご注文はお早めに!」

言うまでもなく、トランプ大統領が2028年に再度大統領選に挑むことを公言したものに他ならない。

憲法修正22条の抜け穴「信用しない」トランプ氏は“奇策”否定

トランプ大統領はこれまで、2028年に3選に出馬することを示唆することはあっても、明言は避けてきた。しかし今回は、同大統領の事業団体「トランプ・オーガニゼーション」傘下の店舗から2028の帽子が「公式グッズ」のように販売されたことで、出馬を始めて公にしたものとも受け止められている。

オンラインストアには、帽子の他にも「トランプ2028」と書かれた商品が並ぶ
オンラインストアには、帽子の他にも「トランプ2028」と書かれた商品が並ぶ

問題は、合衆国憲法が大統領の2回以上の再選を禁じていることだが、トランプ大統領は雑誌TIME4月26日発刊の「トランプ政権100日」特集号のインタビューを受けて、この問題について問われるとこう答えている。

「(2選以上の再選を禁止する)憲法修正22条の抜け穴が議論されるが、私はそうした抜け穴を信用しない」

その合衆国憲法修正22条1項はこう規定している。

「何人も、大統領の職に2回を超えて選出されることはできない。(以下省略)」
(アメリカンセンター訳)

そこで、連続しない再選は「2回を超えて選出」には当たらないとか、3回目は副大統領候補として立候補し、当選後大統領と入れ替われば「選出」されずに就任できるなどという奇策も取り沙汰されていたが、トランプ大統領自身がそれらを否定したことになる。

残るは修正22条の改正ということになるが、それには上下両院でそれぞれ3分の2の賛成か、全米50州の3分の2の州の立法部が発議しなければならない。その上で、4分の3以上の州の批准によって発効するという手順になる。

米国ではこれまで33の憲法修正が発議され、その内27が発効した。最も早く発効したのは投票権を21歳から17歳に引き下げる修正26条で、1971年3月23日に提案されると同年7月1日に発効している。

逆に最も時間がかかったのが議員報酬を規制する修正27条で、1789年に提案されたまま忘れ去られていたが、近年になって学生が発見し202年後の1992年5月7日に発効した。

トランプ大統領の場合、2028年11月7日の次の大統領選挙までに憲法を修正して3選を目指す可能性がないとは言えないが、第2期政権がスタート早々から内外政策で苦戦を強いられ、支持率も下降線をたどっている状況では、この「トランプ2028」の帽子をよほど大量に売りさばかないといけないようだ。
【執筆:ジャーナリスト 木村太郎】
【表紙デザイン:さいとうひさし】

木村太郎
木村太郎

理屈は後から考える。それは、やはり民主主義とは思惟の多様性だと思うからです。考え方はいっぱいあった方がいい。違う見方を提示する役割、それが僕がやってきたことで、まだまだ世の中には必要なことなんじゃないかとは思っています。
アメリカ合衆国カリフォルニア州バークレー出身。慶応義塾大学法学部卒業。
NHK記者を経験した後、フリージャーナリストに転身。フジテレビ系ニュース番組「ニュースJAPAN」や「FNNスーパーニュース」のコメンテーターを経て、現在は、フジテレビ系「Mr.サンデー」のコメンテーターを務める。