トランプ大統領が23日、ゼレンスキー大統領を「交渉カードのない男」と非難。クリミアをロシア領と認める和平案を飲まなければ「国全体を失う」と圧力をかけた。ロシアは東部4州の掌握していない地域の放棄と現戦闘ラインでの停戦を示唆し、妥協姿勢をアピールしている。
「和平交渉に極めて有害」…ゼレンスキー氏に早期の合意求める
アメリカのトランプ大統領が、ウクライナのゼレンスキー大統領について「和平交渉に有害だ」と激しく批判した。

ウクライナ情勢を巡る和平交渉についてアメリカメディアは、ロシアが2014年に一方的に併合したクリミア半島の領有を、トランプ政権が承認するとの和平案を提示したと報じている。
一方で、ゼレンスキー氏は22日「ウクライナは併合を法的に認めていない」と述べ、この案を拒否する姿勢を示していた。

トランプ氏は23日、SNSでゼレンスキー氏の発言を「議論の余地すらない。ロシアとの和平交渉に極めて有害だ」と激しく批判した。
その上で、ゼレンスキー氏を「交渉カードのない男」と揶揄し、「平和を選ぶか、3年間戦い続けて国全体を失うかだ」と突きつけ、早期の和平合意に応じるよう迫った。
プーチン氏が“ロシア妥協案”提示…トランプ氏揺さぶりか
ここからは、フジテレビ・立石修解説委員室長が解説する。
宮司愛海キャスター:
このようにトランプ氏の発言にも、注目が集まっています。ここ数日、アメリカそしてロシアからの提案が様々報じられています。

宮司愛海キャスター:
まずロシア側の案ですが、「現在の戦闘ラインで侵攻を停止する用意がある」と考えているようです。これは22日にイギリスメディアが伝えたもので、プーチン大統領が4月、アメリカのウィトコフ中東担当特使との会談で提案したとしています。
現在の戦況ですが、ロシアはウクライナ東部4州、ルハンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、へルソン州の併合を一方的に宣言しています。ロシアは、この東部4州の掌握していない地域については領有権を放棄する可能性にも言及しているということです。立石さん、ウクライナ側は、この提案を受け入れると思いますか?
立石修解説委員室長:
プーチン大統領は、これまで主張してきた東部4州の全土の占領ではなく、前線の部分での停戦ラインを引くという妥協案を出してきたわけです。これについては、ウクライナ側も一時的な戦闘停止ですとか、交渉を継続するために受け入れざるを得ないという判断をする可能性はあるとは思います。
宮司キャスター:
プーチン大統領は、なぜこのタイミングで妥協案というのを出してきたのでしょうか。

立石解説委員室長:
プーチン大統領がトランプ大統領に対して、「自分はカードを切った」「和平に前向きだ」とアピールをしたいという狙いがあると思います。前週もプーチン大統領は突然一方的に「イースター停戦」などを宣言したり、結局は戦闘は続いたんですが、様々な形でウクライナというよりは、トランプ大統領に対して揺さぶりをかけている印象があります。
宮司キャスター:
この案ですが、アメリカ側はどう言ってるのかというと、こちらはトランプ大統領の言葉です。「クリミア半島をロシア領としてアメリカが承認する」と、これまでウクライナが求めてきたクリミア半島の奪還を断念させてロシア領と認めるという案です。クリミア半島は、2014年にロシアが一方的に併合し、領有権を主張してきた場所ですが、ウクライナ側はなかなか飲めない案ですよね。
立石解説委員室長:
ゼレンスキー大統領は、これに対して「ウクライナはクリミア併合を法的には認めていない」と、強い調子で反論しています。このクリミアを巡る問題というのが、トランプ大統領とゼレンスキー大統領の最も大きな対立点、相違点なんです。
これは武力による領有権の変更を、アメリカが容認することになります。それはゼレンスキー大統領も決して認めるわけにはいかないですし、我々日本も含めた国際社会も受け入れがたい話です。そもそもアメリカ自体も、トランプ前政権も含めて、クリミア併合には強く反対してきた、これは大きなアメリカの方針転換になり、安全保障にも大きな影響を与えてきます。

宮司キャスター:
態度を一転させていると言っても過言ではないと思います。そのゼレンスキー大統領に対し、トランプ大統領は「和平交渉に極めて有害」「交渉カードのない男」などと激しく批判しています。いわばトランプ流といったところかもしれませんが。
立石解説委員室長:
強い言葉ですよね。トランプ大統領は来週就任100日目を迎えますが、連日報じられているように、関税の問題で二転三転して、国内外では大きな批判も受けていると。ウクライナの停戦についても24時間で停戦できると大統領選のときは言っていたが、ところがこれもなかなか進まないと。
これらのゼレンスキー大統領に対する激しい言葉には、トランプ大統領の焦りみたいなものを感じます。この焦りをプーチン氏は上手く突いて、いろいろ揺さぶりをかけてきていると。25日には、トランプ大統領の特使であるウィトコフ大使とモスクワでプーチン大統領が会う予定になっています。ここでの発言が要注目というか、警戒のポイントだと思います。
宮司キャスター:
金子さんは、今後の交渉の鍵というのは、どうなってくると思いますか?
SPキャスター金子恵美さん:
なかなか難しい中で、ウクライナとしては言われたクリミア併合という、アメリカ案は到底受け入れられないということですし、もしこれを受け入れたとしてしまうと、正直、一方的な力による現状変更を認めるのは、国際社会にも影響があります。
また、欧州としても足並み揃えて動ける条件ではないと。ただ、やはりトランプ大統領としてみれば、これまでもとにかく交渉妥結に持っていくと強く言ってきたわけですし、何と言っても平和を実現したという成果を得たいという焦りがある中で、どれだけゼレンスキー大統領が批判されても突っぱねられるかという方が、まずは見ていかないといけないと思います。
立石解説委員室長:
トランプ大統領は突然方針を変更することもあるので、まだ予断を持たずに見ていければいいなと思います。
宮司キャスター:
ヨーロッパの出方というのも注目していきたいと思います。26日にフランシスコ教皇の葬儀がバチカンで行われるということで、そこで対談、会談が行われるかもしれないということです。
この時点で歩み寄りは難しいとは思うが、注目だ。
(「イット!」4月24日放送より)