福井市の総合繊維メーカー「セーレン」の旧本社ビルは、繊維産業の歴史を伝える建物として国の近代化産業遺産にも認定されています。この歴史的な建物が社の内外の人が集いコミュニケーションを図る場として改装され、24日に完成式典が開かれました。
セーレンの旧社屋は1937年(昭和12年)7月に完成し、建てられて88年を迎えます。鉄筋コンクリート4階建てのモダンな外観と造りで、当時の福井県内では“最新“の高層ビルでした。2025年は「昭和100年」。戦災や震災も乗り越え“繊維王国・福井”の歴史を見守ってきた建物の一つです。
24日はリニューアルの完成式典が行われ、関係者約40人が出席。セーレンの川田達男会長が「激動の(創業から)136年を乗り越えた諸先輩の歴史から学び、未来に向けて使命と責任を果たすべくリニューアルした」とあいさつしました。
建設当時の写真をみると、2階を正面玄関とし左右に伸びる車寄せのスロープなど、当時も注目を集める建物だったといいます。完成から8年後の昭和20年には「福井空襲」、その3年後には「福井震災」によって被災。福井市内が廃墟と化した際にも建物は耐え抜き「繊維王国・福井」を支えました。
昭和37年、全国植樹祭に合わせて昭和天皇が福井に入られた際には、セーレン本社ビルが皇族の休憩場所として使われました。この応接室は改装せず、今も当時のままとなっています。
2008年まで、セーレン本社として利用されていたこの建物。今回のリニューアルでは、昭和初期のモダンな建築スタイルである天井などはそのままに、内装にはセーレンの独自技術「ビスコテックス」が使われています。高坂執行役員は「例えばタイルもこの技術で、(大理石に見える)柱もビスコテックスで製作している」といいます。
最新技術を紹介するショールームの機能も備えており、社内外の人が集う場所を目指します。
セーレン・川田達男会長:
「大きな歴史が詰まっている建物なので、ここを起点に未来に向かって発展していく。コミュニケーションの場として“思い”を実現するために大いに活用していきたい」
昭和初期から福井を見守ってきた建物。ここからまた、次の未来に向けて技術開発の拠点となることが期待されます。