70年前に起きた「森永ヒ素ミルク事件」で健康被害に苦しむ女性が、森永乳業に損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁は女性の訴えを退けた。

健康被害に苦しむ原告の女性
健康被害に苦しむ原告の女性
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■70歳の女性は森永乳業の粉ミルクを飲み脳性まひに

1955年、森永乳業が製造した乳児用の粉ミルクに猛毒のヒ素が混入し、130人の乳児が死亡したほか、1万3000人以上に健康被害が出た。

70歳の女性は、この粉ミルクを飲んで脳性まひとなったが、障害の等級が最も重い「1級」と認定されるなどいまも症状が悪化しているとして、森永乳業におよそ5500万円の賠償を求めている。

原告の女性:寝ていても起きても、とにかく痛い痛いの毎日で、生まれてからまともな時が全くない。どんどん死ぬまで悪くなって。

森永乳業は全面的に責任を認めて、1974年に救済団体「ひかり協会」を設立し、会社の負担で被害者に「生活手当」を支給しているが、女性はこれでは不十分だと指摘している。

原告女性の代理人・田中俊弁護士:(今回の訴訟が)50年近く前の救済の内容を変えていくような内容にしたい。あくまでそれは慰謝料という形で、森永乳業に責任を取ってもらいたい。

「森永ヒ素ミルク事件」
「森永ヒ素ミルク事件」

■大阪地裁は訴えを退ける「女性の被害は1995年12月を起点とすべきであり除斥期間が適用される」

これまでの裁判で、企業側は被害の発生から20年以上が過ぎ、損害賠償を求める権利がなくなる「除斥期間」の適用を主張。

これに対し女性は、自身の症状が現在進行形で悪化していることから、被害が起きたとする除斥期間の“起算点”はいまだ来ていないと反論していた。

22日の判決で、大阪地裁は「女性の被害は、遅くとも脊髄が圧迫される病気と診断された1995年12月を起点とすべきであり、除斥期間が適用される」として、訴えを退けた。

原告の女性:不当な判決を受けて…新たな苦しみを味わった。

原告女性の代理人・田中俊弁護士:『時間の経過とともに救済はできなくなるんだ』という、救済を無視するような判決については、非常に怒りを覚えている。

女性は、判決を不服として控訴する方針だ。

森永乳業は「被害者の皆さまへの恒久救済の完遂に向け、引き続きその責任を果たしてまいります」とコメントしている。

(関西テレビ「newsランナー」2025年4月22日放送)

大阪地裁が訴え退ける
大阪地裁が訴え退ける
関西テレビ
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