山形には250年以上続く伝統行事が残っている。サクラが咲く中、鶴岡市鼠ヶ関地区で海の安全と豊漁を願う伝統行事「みこし流し」が行われ、地域の若衆が勇壮に川の中で神事を行った。同じく250年以上の歴史を有する南陽市の無形民俗文化財「鍋田念仏踊り」も行われ、五穀豊穣を願う地元の住民と小学生が2025年の豊作を祈願した。

独特なかけ声「ペレロ、ロレロレロレロー」
若衆の独特のかけ声が港町に響き渡る。
鶴岡市鼠ヶ関の「みこし流し」は、地元の厳島神社の例大祭にあわせて毎年4月15日に行われている。

村人が網にかかった弁天様をまつったところ、豊漁が続いたという古(いにしえ)の言い伝えを基に、江戸時代の中ごろから約250年続く伝統行事だ。
「精進徒(しょうじんと)」と呼ばれる若衆が担ぐみこしには弁天様がまつられていて、行列には子どもたちが担ぐ「こどもみこし」なども加わりながら、雨の中、半日かけて街を練り歩いた。

初めてみこしを担いだという大分出身の精進徒は、「楽しい。妻の実家が鼠ヶ関で担ぐことになった。不思議な祭り、ありがとう!」と、祭りを楽しんでいた。

厳島神社・本間雅春宮司:
都市部・地方に散らばった若者が故郷に戻ってくる。この祭りを楽しみにしている若者たちがいて、ずっと継承していきたいと心からあらためて思う。
クライマックスは地元を流れる川でみこし流し
「ペレロレロレロレローレ、ソーレ!」のかけ声に合わせ、雪解け水が身を刺すような冷たさの鼠ヶ関川で、精進徒たちは懸命にみこしに水をかけて清める。

清められたみこしは、流れに任せながら上流から下流へと繰り返し3回流され、海の安全と豊漁を願う。
これが「みこし流し」と呼ばれるゆえんであり、海の男たちがつないできた地域の誇りでもある。

みこし流しを見守る地域住民は、「みんな元気が良い。この笛の音を聞くと、春という感じがする」「天気が悪くて残念だったが、盛り上がっているので良かった」と話す。
雨にも負けないみこし流しの勇壮な姿に、港町が活気づいた春の一日となった。

内陸・南陽にも250年続く念仏踊り
南陽市に伝わる「鍋田念仏踊り」は、干ばつに見舞われた江戸時代の1773年に、米沢藩主・上杉鷹山が雨ごいの祈願を行ったのが由来とされている。

現在は、毎年4月15日の太符神社の祭礼に合わせて神社の境内で踊りが奉納されるが、15日はあいにくの雨のため近くの沖郷小学校で行われた。

「そーれ! どっこいしょ! どっこいしょ! どっこいしょ!」のかけ声に合わせ、地区住民で作る踊りの保存会や、沖郷小の4年生61人など約130人が、雨の恵みを祈る「道行(みちゆき)」と、雨への感謝を表す「葉生(いれは)」の2つの踊りを繰り返し、2025年の豊作を祈願した。

参加した児童は、「2つの曲をみんなで、合わせて踊れたので良かった」「200年続く歴史ってすごいと思う」と、地元に伝わる踊りに誇らしさを感じているようだった。

踊りは約30分間行われ、250年以上続く伝統がことしも子どもたちの手でつながれた。
(さくらんぼテレビ)