熊本地震で甚大な被害を受けた西原村の消防団員らが先日、能登半島地震の被災地、石川県を訪問しました。被災地をつなぐ「絆」、「恩返し」の支援に密着しました。

【西原村消防団第2分団 坂口 奉弘さん】
「熊本地震の時にいただいた全国からの支援を、少しでも今度は能登の珠洲市に分けられたらなという思い」

3月21日、能登半島地震の被災地で支援活動を行うため、西原村の消防団員らがマイクロバスに次々と荷物を積み込んでいました。参加するのは現地合流を含め11人。

家族らに見送られながら石川県珠洲市の大谷地区へと向かいました。

【有田 和令 記者】
「半年前の豪雨で大規模な土砂災害が起きた珠洲市大谷町です。多くの住宅の1階部分は流木や土砂で埋め尽くされています」

珠洲市の中で「外浦」と呼ばれる日本海に面した大谷地区。

去年、元日の地震と9月の豪雨で甚大な被害を受けました。

豪雨災害から半年。

現地では住宅の敷地に流れ込んだ土砂の撤去作業が続けられていました。

【県外からのボランティア】
「みんなでできることをして1日でも早く復旧できればいいのかなと」

一方で、大量の流木や土砂が入り込んだ住宅は倒壊の恐れがあり、手つかずの状態となっていました。

翌朝、大谷地区に入った西原村の一行はまず地元の消防団に義援金を贈りました。

【珠洲市消防団大谷分団 川端 孝さん】
「みなさんも被災されたわけじゃないですか。こうして来ていただいて、気持ちだけでもありがたい」

一行は、西原村の小森地区や商工会、企業などからの寄付金を珠洲市で活動する支援団体などにも届けました。

【大谷地区で支援活動行う 小浦 むつみさん】
「〈恩送り〉というか見ず知らずの人がしてくださるので、ちゃんとつないでいかないといけないなと」

その後、一行を乗せたマイクロバスは、海岸沿いの道路を西へ…。

海岸沿いではくみ上げた海水を砂地にまく「揚げ浜式」と呼ばれる塩づくりが行われていて、塩田が点在しています。

しかし…。

【有田 和令 記者】
「こちらは日本海を臨む能登半島の北岸、珠洲市長橋町です。地震によって、およそ3メートル海底が隆起したとされています。その影響で現在も漁港は使えない状態となっています」

珠洲市では、陸地が広がったことで海が遠のき、「塩づくり」にも暗い影を落としています。

一行は、被災した塩田を訪れました。

現在、ボランティアの拠点となっています。

【塩田を経営 中巳出 理 社長】
「懐かしい!涙出てきた。熊本から来ていただいてありがとうございます」

消防団のメンバー、坂口 奉弘さんはかつて中巳出 理社長が経営する塩田で働いていたことがあり、それが今回の被災地支援のきっかけとなりました。

一行は、近くの集落へ向かい、豪雨による土砂災害で水に漬かった民家の泥出しボランティアに従事。

膝の上の高さまで積もった泥をスコップなどを使ってかき出しました。

【西原村消防団 吉丸 和男さん】
「想像以上ですけど、来て良かった。熊本地震の恩返しという思いでみんなやっている」

【災害支援ONETEAM 南岡 俊文 代表】
「すごく手際いいし、バリバリ働いてくれているのでありがたい。西原村の消防団の制服を見て懐かしいなという感じで…」

熊本地震の際もボランティアとして南阿蘇村に駆けつけたという南岡さん。

「人の手が必要だが、ボランティアが少ない」と指摘します。

【災害支援ONETEAM 南岡 俊文 代表】
「関心が薄れてきているというのが一番気になるところ。忘れないことが一番。それを能登の人たちも望んでいると思う」

【塩田を経営 中巳出 理 社長】
「地震から1年3カ月たってようやく水道が復旧した。まだ電気が来ていない地域もある。まだ復旧です」

『まだ「復旧」の途中』。

被災地の厳しい現実がそこにはありました。

【西原村消防団 坂口 奉弘さん】
「この外浦の地域が全然復旧が進んでいないことを実感できたので、熊本に戻って、もっともっと発信していかないといけないと感じた」

【大谷小中学校の教諭】
「私も寂しくて〈みんなに会いたいな〉と思う1年間だったけど、きょうみんなと会えて幸せです」

【乾杯】
この日の夜、大谷地区のレストランでは、地元の小・中学校のPTAが主催した卒業パーティーが開かれました。

【珠洲市大谷地区 村上 ゆりさん】
「(大谷地区では)70%くらい子育て世代が(地震で)古里を離れた状態になっていて」

地震の前、21人が通っていた大谷小中学校。地震と豪雨によって多くの子育て世代が古里を離れ、児童生徒の数は5人になりました。

会場では、西原村の消防団が差し入れた地元産のあか牛や豚肉、馬刺しが振る舞われました。

古里を離れた子どもたちも参加して中学校を卒業する5人の門出を祝いました。

【参加した生徒】
「トンカツおいしい」「おいしい」
【参加した生徒】
「やっぱりこのメンバーが集まると楽しい」
【珠洲市大谷地区 村上 ゆりさん】
「駆けつけてくれて本当にありがたい。〈いつか恩返しができるように〉と思っています」

泥出しボランティアを終え、会場に駆けつけた西原村の一行。地震によって減った人口が、その後、回復して地震前より多くなっていることなどを紹介し、大谷地区の復興に向けエールを送りました。

熊本地震と能登半島地震の被災地をつなぐ新たな「絆」が生まれた支援活動となりました。

今回、珠洲市を訪問した消防団のメンバーは4月8日、西原村で報告会を開催。能登半島地震の被災地の現状を発信し、多くの村民に関心を持ってもらい支援を継続することが必要だと訴えました。

テレビ熊本
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