春の越前海岸を南から北へ

福井県内の魅力を再発見する「小旅」のコーナでは今回、春の越前海岸をドライブします。海岸沿いに点在する自然の造形美を堪能しながら南越前町から福井市までを走ります。
       


後醍醐天皇の皇子をかくまったと伝わる「下長谷の洞窟」

旅のスタートは道の駅「河野」から。眼下に少しかすんだ春の日本海を望みながら海岸線を南から北へ進みます。
   
漁火街道に入りしばらく走ると、最初の目的地「下長谷の洞窟」に到着です。
   
甲楽城海水浴場近くの山肌に控えめに空いた穴があり、10段ほどの階段を下りると洞窟の入り口に。長い年月をかけて波が岩を少しずつ削りできた「下長谷の洞窟」は20mほどの短い洞窟で、最深部は屈まないと進めないくらいの狭さです。
  
南北朝時代に、気比神宮の神官が争いで敗れた後醍醐天皇の皇子をかくまった場所とも伝わっていて、そのひっそりとした佇まいに、なるほどと手を打ちます。
 


西行法師が命名「入日ケ滝」

さらに越前海岸を北へ。越前町にある滝を目指します。道路沿いの階段を上り脇道を進むと、ザーという水の音が聞こえてきました。
    
「入日ケ滝」というその名は、日本海に注ぐ滝の水が夕日を反射し美しく輝く様子を見て、平安時代の歌人・西行法師が命名したと伝えられています。高さ約16mの滝口から落下する水は、途中、段を作りながら浅い滝つぼに流れ落ち、細かい水しぶきが上がっています。 
    
季節が進み太陽の力強さが増せば、水しぶきはキラキラと輝き、さらに美しい景色が拝めそうです。
       

地域信仰の対象「神の足跡」

最後は伝説の奇岩を見に、さらに車を走らせます。有名な奇岩「弁慶の洗濯岩」を背に道沿いを少し歩くとむき出しの山肌が見えてきます。看板には「神の足跡」の文字が。
   
ずいぶん大層な名前だと解説を読めば、その昔、大干ばつに苦しむ村人のため、神様が海から水をくみ上げた時に崖に足を置いた跡だそう。目を凝らせば、縦5m、幅2mの一対の足跡が浮かび上がってきます。
   
地域にとって「神の足跡」は、ご先祖様が過去の大災害を乗り越えた証でもあり、信仰と尊敬の対象ともなっているようです。
 

春の越前海岸をドライブした今回の小さな旅。自然が育んだ唯一無二の造形を堪能しつつ、遠い昔からの伝説がいまも残る越前海岸の歴史を感じた一日になりました。

福井テレビ
福井テレビ

福井の最新ニュース、身近な話題、災害や事故の速報などを発信します。