名古屋市名東区にある「ピースあいち」で2025年3月29日、名古屋空襲にB29搭乗員として加わった父をモデルにした映画「しがみつき、燃え続ける〜名古屋を消す〜」が上映されました。製作したアメリカ人の男性は、民間人の犠牲が“なかったこと”にされている現実を、作中で問いかけています。

■製作のキッカケは遺品の写真「なぜ残したのか考えたくなった」

名東区にある戦争と平和の資料館「ピースあいち」では、映画「しがみつき、燃え続ける」や父親の遺品などを通して、名古屋空襲を振り返る展示が行われています。

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製作したのは、アメリカ人アーティストのボブ・フレミングさん(75)です。

映画を製作したボブ・フレミング氏:
アメリカの視点からは、第二次世界大戦は“いい戦争”だったということになっている。しかし、そういった神話のために隠され、消されたものはなんだろうか。

名古屋空襲をテーマにした映画を作ったのは、父親の遺品から見つけた一枚の写真がキッカケです。

写真の日付は1945年3月12日で、B29が名古屋への空襲のため、市街地に狙いを定めた様子を収めていました。

ボブ・フレミング氏:
レーダー写真はとても恐ろしかった。なぜなら、それは今から爆弾が落とされるということを意味していたから。父親がなぜこれを取っておいたのか、考えたくなった。

フレミングさんの父・ロバートさんは日本へ32回、このうち名古屋に6回出撃しましたが、生前、戦争については一切語らなかったといいます。

■空襲について語らなかった父に問いかける「戦争の責任」

映画では、新たな技術でフレミングさんが亡くなった父と会話ができるようになったという設定で始まり、フレミングさんが父親と1人2役を演じています。

映画の中では、フレミングさんが父に「戦争の責任」について問いかけています。

ボブ・フレミング氏(映画の中で):
父さんが日本への焼夷弾攻撃を違法だと考えていなかったとしても、深いところでそれが残虐行為であり、不道徳だと感じたことはない?そのことに後悔はなかった?

映画のタイトル「しがみつき、燃え続ける〜名古屋を消す〜」には、空襲とそれをなかったことのようにしていた父親らへの批判などの想いが込められています。

■民間人の犠牲は「“なかったこと”にされている」

名古屋への空襲は1942年4月から63回行われ、夜間に市街地への無差別爆撃も行われました。

最も被害が大きかった1945年3月12日の空襲では、300機ほどのB29が爆撃し、一晩で500人以上の犠牲者が出ました。

フレミングさんは映画の中で、父親に「もし第二次世界大戦が、アメリカにとって「正義の戦争」だったと仮定しよう。10フィート離れたところにいる武装していない日本の民間人を、ピストルで撃っていいというわけではないよね?」と、強く訴えています。

この日、映画を観たという女性(94)は、名古屋への空襲があった際、中区に住んでいました。

94歳の女性:
こちら(名古屋)の方からだけ、空襲について見ていたんだけど、アメリカの方からそういう目で見てもらえるのは…。

ボブ・フレミング氏:
これは民間の犠牲者の話で、それはいつも隠されている。いつも“なかったこと”にされている。

名古屋市では、アメリカ製の不発弾が相次いで見つかっています。戦後80年経った今も、私たちの身近なところに残る、戦争の傷跡です。

「ピースあいち」での企画展は、5月17日まで行われています。

(東海テレビ)

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