「砂浜で人が倒れている」4月13日午前10時すぎ、宮城県岩沼市の海岸を散歩していた人から警察に通報が入った。倒れていたのは、仙台市に住む女性保育士(35)。発見後の雨によるものか、海水に入ったのかは不明だが、全身が濡れた状態であおむけに倒れていた。女性保育士は胸に刃物のようなもので刺された傷があり、その場で死亡が確認された。現場は車以外でたどり着くのは難しい海岸で、周辺には街灯もない。警察は殺人・死体遺棄事件と断定し、捜査本部を立ち上げた。なぜ女性保育士は殺害されたのか、本格的な捜査が始まった。

津波で被災した海岸で発見
事件の現場となったのは、仙台空港から南東に約3キロ離れた岩沼市の海岸。東日本大震災の津波で被災した地域に建設された「千年希望の丘 第5公園」の東300メートルにある。防風林に囲まれ、交通の便は決していいとは言えない。車以外では行きづらい場所だ。

殺害された仙台市太白区に住む保育士・行仕由佳(ぎょうじ・ゆか)さん(35)の遺体は、防潮堤の外側の砂浜の部分で見つかったという。服を着た状態であおむけに倒れていた。通りかかった人が発見し、警察に通報。その場で死亡が確認された。

胸を刺され殺害 捜査本部設置
司法解剖の結果、行仕さんの結果は失血死と判明。刃物のようなもので刺された傷が複数あり、胸の傷が致命傷になったという。

4月14日夜、宮城県警は殺人・死体遺棄事件と断定し、岩沼警察署に宮澤伸育刑事部長を本部長とする110人態勢の捜査本部を設置した。
靴は脱げ…所持品は見つからず
捜査本部によると、遺体の周りにも血痕が確認され、行仕さんの血か確認しているという。また、発見時、行仕さんは靴下をはき、靴をはいていない状態だった。現場で靴は見つかったというが、凶器のほか、行仕さんの財布やスマートフォンなど身元の特定につながるものは見つからなかったという。

子供と2人暮らし 車ないのになぜ?
行仕さんは太白区のアパートで小学生の子供と2人で暮らしていた。アパートには2017年に入居し、駐車場を借りていた時期もあったが、現在は解約して車を持っていなかったという。
捜査本部によると、行仕さんは12日に自宅アパートから1人で外出した。行仕さんが帰ってこないことから、子供が山形県に住む祖父母(行仕さんの両親)に連絡。13日に警察へ行方不明届が出されたという。

捜査本部も行仕さんが運転免許証を取得しているが、車を所有していないことを確認していて、現場や自宅周辺の防犯カメラを確認するなどして、行仕さんがどうやって現場に行ったのかを調べているという。
トラブル把握せず…何が?
行仕さんは青葉区の保育園で勤務していた。金髪で背が高く、子供と散歩する姿など、近所の人の印象にもはっきりと残っていた。行仕さんが現在のアパートに住んで8年あまり、近所の人は「トラブルなど聞いたことがない」と口をそろえる。

捜査本部の会見でも、事件につながるトラブルについて質問されたが、警察は現時点で「本人や家族のトラブルを含めて把握していない」としている。
家を出てまもなく被害か
行仕さんの死亡推定時刻は4月12日(土)から13日(日)午前10時の間とされている。子供を残し、1人で外出した行仕さんの身に一体何があったのか?警察はあらゆる可能性を視野に、交友関係を含めて広く捜査している。
