4月7日、兵庫県警察本部の駐車場で撮影されたスーツ姿のこわもての男たちは、特定抗争指定暴力団・山口組の幹部だ。
捜査関係者によると、この数日前、山口組幹部から「ある書類を提出したい」という申し出があったという。

「山口組」が抗争終結に向けた誓約書提出

その書類は、抗争集結に向けた誓約書だった。

「山口組」が抗争終結に向けた誓約書を兵庫県警に提出した
「山口組」が抗争終結に向けた誓約書を兵庫県警に提出した
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山口組は抗争を終結することにしました。今後一切もめることはしません。

兵庫・神戸市に拠点を置く国内最大の暴力団「山口組」が、対立組織との抗争を終結すると打ち出したのだ。

山口組はなぜ、突然このような行動に出たのだろうか。
独自取材を通して、その背景と思惑を探った。

2015年に分裂する形で「神戸山口組」結成

山口組は、暴力団の世界で絶対的な存在として長く君臨してきた。

2015年に篠田組長の運営方針に複数幹部が反発、分裂する形で「神戸山口組」が結成された
2015年に篠田組長の運営方針に複数幹部が反発、分裂する形で「神戸山口組」が結成された

しかし、結成100年を迎えた2015年、司忍こと、篠田健市6代目組長の運営方針に複数の幹部が反発し、分裂する形で山健組・井上邦雄組長をトップとする「神戸山口組」が新たに結成された。

2016年に関東に拠点を置く山口組の直系33団体の幹部が集まった親睦会の映像では、会に出席した幹部の口からは、神戸山口組への宣戦布告ともとれる言葉が飛び出した。

ーー(記者)2つ山口組がありますが?
山口組系幹部:

2つって、あっちはヤクザじゃねえじゃんか、おまえ。あんなもの認めてねえよ、バカヤロー。裏切った連中じゃんか、あいつら。裏切り者だよ、裏切り者。

ーー(記者)これから抗争どうなるんですか?
山口組系幹部:

つぶすだけだ、あんなもん。

両者の対立は根深く、ここから全国で衝突が繰り返される事態へ。

それぞれの関連施設に、ダンプカーで突っ込むなど事件も相次いだ。

ーー(記者)全国で抗争が相次いでいますが、市民生活の影響はいかがお考えになるでしょうか?
山口組・司忍こと篠田健市組長(2016年・神戸市):

…(無言)。

“血で血を洗う”事件が全国で頻発した
“血で血を洗う”事件が全国で頻発した

その後も神戸市の商店街で、神戸山口組系の組長が山口組系の組員に刺され重傷を負うなど、“血で血を洗う”事件が全国で頻発した。

兵庫県公安委員会は2020年、山口組と神戸山口組を「特定抗争指定暴力団」に指定した
兵庫県公安委員会は2020年、山口組と神戸山口組を「特定抗争指定暴力団」に指定した

こうした事態を受け、兵庫県公安委員会は2020年、市民に危険が及ぶおそれがあるとして、山口組と神戸山口組を「特定抗争指定暴力団」に指定した。

「特定抗争指定暴力団」指定で活動厳しく制限か

終わりが見えない状況の中、今回、山口組が打ち出した“抗争集結宣言”。
背景には何があるだろうか。

FNNが入手した山口組の創立110年を記念した機関誌には次のような記述があった。

山口組創立110年を記念した機関誌より
山口組創立110年を記念した機関誌より

当局による締め付けも年々厳しくなり、制限などを数えればキリがないですが、時代に沿った考え方で活路を模索し、一人一人が己の矜持(きょうじ)を持って行動しなければなりません。

特定抗争指定によって活動が厳しく制限されていることがうかがえる。

その実情について、山口組系の元組長はこう話す。

山口組系元組長が実情を語った
山口組系元組長が実情を語った

山口組系元組長:
飲食店に入るのもダメやし、(事務所が)使用禁止とかなって、まあ、不便は不便やね。

さらに、神戸山口組については…、

山口組系元組長:
神戸についてはもう衰退していく一方で、カエシ(報復)というカエシしてないし。

実際、神戸山口組の構成員は、ここ10年で9割以上も減っているという。

今後の動向が注目される中、4月8日にある動きがあった。

愛知・豊橋市の平井一家の事務所に山口組の直系団体の組長らが集結。
制約書の提出を受けて、緊急の会合が開かれたものとみられる。

この会合で、山口組の幹部は大声で、「神戸(山口組)は構うな。とにかく六代目山口組は前進あるのみ。前進あるのみ」と訴えたという。

分裂から10年。
抗争集結は現実のものとなるのか、対立する神戸山口組側は、まだ沈黙を守っている。
 (「イット!」4月14日放送より) 

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