北海道オホーツク地方の斜里町で、生徒たちが質問し図書館の職員が回答する、掲示板でのやりとりが話題となっている。
1冊の本にもなったその「ゆる~い」つながりを取材した。
恋愛相談も?中高生のリアルな質問に職員が本気で回答
「彼氏とこれから遠距離になります、どうしたら乗り越えられますか?」(質問)
「『素直になる』『匂わせをしない』です。1番魅力的なのは素直な人です」(図書館の職員)

このやりとりが見られるのは―。
「中に入ると開放感がありますね、飲食スペースに掲示板があります」(沼田海征 記者)

中高生専用の「YAコミュ板」が人気
「YAコミュ板」だ。
「YA」とはヤングアダルトの略。
中高生限定で質問を受け付けている。
答えるのは、図書館の職員。
地元では今この掲示板でのやりとりが話題になっている。

「親にお金をねだる方法を教えてください」(質問)
「『お金がほしい』と言った際、かなりの確率で『何に使うの?』と返されるでしょう。その時なんと答えますか?努力しない限り何かを得られることはありませんよ」(図書館の職員)
「斜里に住んでて良いことあった?」(質問)
「ありましたよ。一度違う地域で生活してみて斜里に戻ってくると、その良さを実感しやすくなると思います」(図書館の職員)
「返事を読むのが楽しいので、時々更新されているか見にくる。大喜利みたいな感じで楽しい」(斜里町民の男性)
「大喜利みたいで楽しい」住民や生徒にも好評
地元の中高生はどう思っているのだろうか。
「(質問を)書いたことあります。SNSじゃなく掲示板でやりとりするのはすごく楽しい」(高校2年生)

中学校も高校も図書館には近いのだが、利用する生徒が少ないため、中高生に興味をもってもらおうと2023年「YAコミュ板」を設置することにした。
「図書館に足を運んで、自分の考え方がもっと広がる機会を図書館で作ってほしい」(斜里町立図書館 松井卓哉 館長)

図書館活性化のきっかけに―想像以上以上の反響
反響は想像以上だった。
当初は小さいボードでしたが、つぎつぎと質問が寄せられ、今のスタイルに。
中高生からの質問は600以上に上った。
質問の数に比例するかのように、図書館の来館者数は1年間で6000人以上も増加している。

本にもなった!『図書館のゆるゆる人生質問箱』
中高生と図書館とのリアルでゆるいやりとりは3月、本になった。
「図書館のゆるゆる人生質問箱」だ。
斜里町でたった1軒の書店に行ってみるとー。
「レジの横に山積みになっていますね」(沼田記者)
「非常に反響がありまして10日で70冊近い売り上げ。いろいろなことに悩みながら歩いている中高生になにかプラスになると思ってすごく感動しました」(神田書店 神田恵子さん)

「さんすう」とだけ書かれた、高校生の質問には。
「【さ】すがに高校生へ今さらこ【ん】なことを言うのも何だか【す】ごく微妙ですが学校で習【う】教科は数学になりますよ」(図書館の職員)

「さんすうのやつ、頭文字読んだら『さんすう』ってなっていた」(中学2年生)
どのように返事を書いているのだろうか。
図書館の職員さんが描いたネコの絵で顔を隠すことを条件に、撮影させてもらった。

「人生とは?」―小さな図書館が教えてくれること
「自分にとって重大な悩みでも、日本規模とか世界規模で考えたら『へっちゃら』みたいな感じをおもしろく伝えられたらなと思います」(図書館の職員)
「答えっていろんな回答があるよ、図書館の人はこう思うよ。いろいろな答えの中から自分の中で本当の答えを見つけてほしい」(松井館長)

「人生とは何ですか?」(質問)
「リアクションではないでしょうか。日々降ってくる出来事に対してどんなリアクションをするかで次に降ってくる出来事が変わってきます。その連続です」(図書館の職員)
答えはひとつじゃない。
小さな図書館がきょうもいろいろなことを教えてくれている。