2025年度、福井県立大学に新しく開設された国内唯一の恐竜学部。一体、どんなことが体験できて何を学べるのか、新入生や学部長を取材しました。
 
福井県立大学に新設された恐竜学部。一期生となる学生たちに話を聞くと…実に個性的!「小さい頃から持ち歩いている」とパキケファロサウルスのフィギュアを手に話してくれる学生や、「ケツァルコアトルスが飛べていたか、いなかったか、という論争が面白い」とお題を持ち出す学生、そして「発掘とか、フィールドに出るのが想像つかないので楽しみ」と新しい学びへ胸を膨らませる学生など、個性豊か。
 
入試の志願倍率は前期が7.3倍、後期が27.3倍の超難関を突破した県の内外の34人(男性:17人、女性17人)が、恐竜学部1期生として新たなスタートを切りました。
 
1期生の1人、井上沙紀さんは神奈川県から福井県にやってきました。自宅での取材に応じてくれた井上さん。一番好きな恐竜は「スピノサウルス」と教えてくれました。「恐竜を好きになったきっかけになったのがスピノサウルス」という井上さん。そのきっかけとなのが、東京・お台場で開かれたスピノサウルスをメインにした展示会でした。「2024年にお台場で開かれていた恐竜博覧会を見に行った時に、福井の恐竜研究にフォーカスした展示があって面白いと思った。前の仕事がIT系なのもあって、最新の技術を使って古代のものを解明していくのが面白いと思ったと話します。さらに「博覧会の最後に恐竜学部が新設されますというのを見た」のが恐竜学部を志すきっかけとなりました。
 
実は井上さんは、会社勤めを経て「社会人枠」で恐竜学部を受験。募集若干名という
難関を見事に突破し、合格を機に退職したそうです。
 
恐竜学部は恐竜・地質学科の1学科制で、1年生は永平寺キャンパスで主に一般教養科目を、2年生からは県立恐竜博物館の隣に建設中で2025年12月完成予定の勝山キャンパスで学びます。3年生からは「恐竜・古生物」コースと「地質・古環境」コースに分かれ、海外での発掘調査や実践的なフィールドワークを通して、より高度な専門知識を身につけます。
 
では、そもそも恐竜学部では何を学べるのか、恐竜学部の西弘嗣学部長に話を聞きました。
 
福井県立大学恐竜学部・西弘嗣学部長:
「恐竜のことだけを研究するというイメージが非常に強いが、我々の目的としているのは、自然史科学を学び地球の色々な生物や自然を理解してもらう。他の学部では体験できないような、標本をCTスキャンをかけて解析し分析して恐竜の生態を探るという、福井県でなければできなかった学部」
 
授業は隣接する県立恐竜博物館と連携し、一体的な教育・研究システムを目指し、博物館の研究員のほぼ全員にあたる14人が講師として授業に入ります。博物館が保有する標本を活用したり、全長1メートルを超える化石の解析が可能な大型コンピューター断層撮影装置=CTを用いた化石のスキャンやデータ解析に取り組み、最新技術に触れながらデジタル技術にも優れた人材を育成します。
 
ちなみに県立大学が導入する大型CTスキャンの価格は、約3億円。これは、県の2025年度当初予算案に盛り込まれている勝山キャンパス整備のための研究用備品購入費用5億6972万円の半分以上を占める額で、恐竜学部の目玉の一つとなる設備です。2026年1月~2月には勝山キャンパスに到着する予定です。
  
本格的な授業はこれからですが、入学ガイダンスでは「オリエンテーションの段階でハンマーとヘルメットを買ってくださいと言われていて、オリエンテーションの段階で『あ、恐竜学部だ』って思った」と井上さん。ただ、「支給じゃないのでどれを買っていいかも分からない。ヘルメットとハンマーの知識がないから」と笑います。
 
では、その恐竜学部を卒業後はどんなキャリアを描けるのでしょうか。
 
福井県立大学恐竜学部・西弘嗣学部長:
「研究者になる人間はどこの大学でもわずかな人間。県立大学も同じで、全員が研究者になるわけではないので、それに特化した将来像を作るというのは適切ではないと僕は思っている。(恐竜学部の強みである)自然史科学を学んで、さらにデジタル技術を持った人材を我々の大学から福井県に輩出することができれば、将来的に大きな福井県の人材育成になると信じている」
 
井上さんは、自身の将来像について「これになりたい、というものがあるわけではないが、新しい知識を得るのが好きなので、敷居を下げて、誰でも楽しく学べるところなんだというのを知ってもらい、その場の学びで終わらせないで興味を持ったものを勉強してもらうような仕組みが何か作れたらと思っている」と話します。
 
夢と希望が膨らむ恐竜学部の新1年生は、5月にさっそく、新種の恐竜が見つかっている勝山市北谷町の発掘現場で実習を行う予定です。
 
将来のキャリアとしては、研究員や学芸員のほか、行政関係での土木・建築や防災分野での活躍や、理科の分野での高校教諭などが想定されているということです。

福井テレビ
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