貿易赤字の解消を目指すアメリカのトランプ大統領は、「追加関税」や「相互関税」と称して輸入相手国に高い関税を発動します。その税率は、日本の場合24%から25%と極めて高い水準になります。
乗用車の関税は25%上乗せ
日本から多く輸出されている乗用車に対しては、これまで2.5%の関税が課されていましたが、25%が上乗せされ27.5%にアップします。関税には専門的な計算があるため、あくまで値上がりのイメージですが、単純に言えば日本円で400万円の車が500万円になる計算です。
この大幅な関税の引き上げで、県内企業にどのような影響が予想されるのか取材しました。
カーシートを主力事業とする「セーレン」
カーシートを主力事業とし、海外での売り上げが業績をけん引している、福井市のセーレンを取材しました。
原渕由布奈アナウンサー:
「車輛資材部門で、アメリカやメキシコの子会社の売り上げが非常に大きいが今回の関税措置の影響は?」
セーレン勝木知文専務:
「我々は、まず直接的にアメリカに輸出している製品は基本的にはない。メキシコはカーシートの製品を作っているが、メキシコ国内でそのカーシートメーカーに(素材を)販売し、その販売先の業者がアメリカに輸出するという形。我々にとってみると、地産地消という形でメキシコでは事業展開をしている。アメリカの子会社は生産活動を行っているので、原材料等でアメリカ国内で調達できないものは国外から調達していて、関税がかかる。基本的には、アメリカでの調達を検討するとともに、コスト増については、メーカーへの転嫁をお願いする」
原渕アナウンサー:
「アメリカでの消費が落ち込んだ場合の影響は考えられる?」
勝木専務:
「輸出したものが自動車になって値上げされれば、当然、アメリカの商品にはマイナスの影響があると思う。そこで販売量が減れば、我々の生産量も影響を受けるということがあるかも。国外9カ国で事業展開しているので、アジア、ヨーロッパでの事業展開を(積極化することを)含めて、今回を機に成長につなげていきたい」
産業用機器製造の「エイチアンドエフ」
あわら市にある自動車用大型プレス機メーカーの「エイチアンドエフ」は、売上の7割が国内の設備投資向けで、自動車メーカーの投資が不透明に。「コロナ禍からの需要回復に動いているところだったが先が見えなくなった」としています。
メガネフレーム製造の「シャルマン」
鯖江市の眼鏡フレーム製造大手、シャルマンでは、主要市場のアメリカへは日本や中国から輸出していて「実際どうなるのか見通しが立たない。精査し、確認を進めていく」としています。
「梵」で知られる加藤吉平商店
また、日本酒「梵」で知られる加藤吉平商店は売上の4割強が海外で、その約半分がアメリカということもあり「非常に心配。アメリカへの直接販売だけでなく、海外は富裕層が主な顧客で世界中に影響が波及する懸念がある」とコメント。5月から値上げが決まっていて関税とダブルパンチなものの、現在は駆け込みで需要が2~3割増となっているということです。
ジェトロに相談相次ぐ
こうした中、県内企業の海外展開や貿易の拡大を支援するジェトロ福井には、企業からの相談が相次いでいます。
ジェトロ福井の田中達史所長は「3日、4日の2日間で約10件の相談があった。主なものは、自社製品が今回の追加関税の対象となるのか、今回の追加関税によって何パーセントの新たな追加関税をかけられるのかという内容。眼鏡関連や機械産業からの相談が寄せられている」と話します。
専門家の見解はー
国際経済学が専門で、貿易政策について研究する県立大学の杉山泰之教授は、県内企業への影響について、間接的にアメリカへ輸出する業種も影響があると指摘します。
福井県立大学・杉山泰之教授:
「繊維産業では、福井から中国やベトナムに向けての輸出が非常に多い。中国に対しては、今すでに課されている分も合わせると54%の関税になる見込み。ベトナムは46%の関税になっているので、(中国、ベトナムからアメリカへの)貿易が縮小することの影響を受ける可能性はある」
原渕アナウンサー:
「今回のこの関税政策、軽減や撤廃のシナリオは?」
杉山教授:
「アメリカ国内がどういう影響を受けるのかが効いてくる。関税を引き上げた分、消費者が買う時の販売価格に転嫁されて値段が上がって日用品が買いづらくなるようなことが起きると、ここは適用の除外にします、とか少しずつ厳しい範囲を狭めていくことはあるかも」
トランプ大統領は7日、記者団に対し「恒久的な関税もあり得るし、交渉もあり得る」と述べるとともに「全ての国と公平な取引を行い、それができなければ彼らととは一切関わりを持たないつもりだ」と語り、各国に交渉を呼びかけました。