この時期にテレビに出ると「菅内閣を名付けるとしたら?」と必ず聞かれるのでいろいろネーミングを考えていたらたくさん思いついた。
「オヤジ臭い内閣」

党役員人事を見てびっくりした。おじいさんばかりだ。二階幹事長81歳、下村政調会長66歳、佐藤総務会長68歳、山口選対委員長71歳、森山選対委員長75歳、これに菅総裁71歳が加わると、6人中4人が70オーバーなのだ。彼らを補佐する野田聖子幹事長代行が還暦なのに「小娘」に見えてしまう。

内閣を見ても79歳の麻生財務相、75歳の平沢復興相らオヤジ感満載で、女性は再任の橋本五輪相と2度目の上川法相だけ。菅首相は「国民のために働く内閣」と言っているのでこの顔ぶれはやむを得ないのだろうが若者や女性はもう少し頑張ってほしい。
「ガースーひとり勝ち内閣」
5派閥に推された菅氏は派閥の言う事を聞かざるを得ないと言われているが、顔ぶれを見ると、菅氏がやりやすいメンバーだなという印象だ。菅氏は安倍前首相が退陣表明した直後、国民の「同情」が「政権の継続期待」に向かったところでポンと出馬した。抜群のタイミングで、安倍、麻生両氏は当然推し、竹下派も推し、二階派も推した。
だから菅氏は派閥の人達が期待するほど派閥に恩義を感じていない。派閥均衡と言われている党人事についてもたとえば麻生派の佐藤総務会長については派閥の推薦でなく一本釣りだった。即戦力の田村厚労相、上川法相、平井デジタル相を入閣させたほか、梶山経産相(再任)や小此木国家公安委員長など「身内」も堂々と処遇している。ひとり勝ちの菅氏に対して文句を言う者はいない。
「菅官房長官がいない内閣」
ただ菅政権の顔ぶれを見て改めて気づくのは「菅内閣には菅官房長官がいない」という事実だ。安倍政権には首相が3人いると言われた。安倍氏と菅氏と今井秘書官だ。実力者3人が補完し合って政治判断をしていた。安倍氏は首相の座を降り、今井氏も参与になって表からは姿を消す。菅氏はこれからひとりぼっちで政治判断をしなければならない。

総裁選を制した後、立ち上がって四方にお辞儀をした時に菅氏はものすごく怖い顔をしていた。あんな怖い顔は初めて見た。その後に党本部の「総裁の椅子」に座った時に「責任感」という言葉を使った。菅氏はその責任感を一人で背負って、一人で戦うことになる。

【執筆:フジテレビ 解説委員 平井文夫】