栃木県日光市で人気の鬼怒川温泉にある“廃ホテル”が、“観光スポット化”で影を落としている。
アスベスト飛散など危険性もあることから、市が立ち入り禁止にしているが、ユーチューバーらによる無断侵入が相次いでいる。これらの“廃ホテル”を解体できない理由とは何なのだろうか。

バブル期の“負の遺産”に観光客

日本有数の温泉地で見たのは荒れ果て廃虚となったホテル。
今、こうしたバブル期の“負の遺産”が“観光スポット化”し、多くの観光客が詰めかけていた。

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廃虚を見に来た観光客は「いつ崩れるのかという危険性はありますけども…」と話していた。

取材班が向かったのは栃木県日光市。
問題の廃虚は、清らかな鬼怒川沿いにひっそりと佇んでいた。

立ち並ぶ3つの廃ホテル。
長年、ほったらかしにされた建物の壁はボロボロとなっている。

 鬼怒川が一望できた客室の窓ガラスは割れ、見るも無残な姿となっていた。

バブル崩壊などで経営破綻し“廃墟”化

不気味さを感じるほど朽ち果てた廃ホテル。
これらのホテルは1990年代のバブル崩壊などの影響で経営が続けられなくなり、そのまま20年以上の時を経て廃虚となってしまった。

このホテルの看板はゆがみ、名物だった“かっぱ風呂”の文字が一部剥がれている。

観光客は、「さみしさを感じる」「廃虚になったホテルをどうやって片付けるのかをよそから来ても心配になる」と話す。

また取材中、鬼怒川にかかったつり橋で廃ホテルの写真を撮る観光客の姿も。

話を聞くと、「廃虚と橋が見たくて来ました。思ったより範囲が広くてつり橋もすごい揺れてそれも相まってすごい怖い」と話していた。

アスベストなど飛散…市は立ち入り禁止に

一方、ネット上では“心霊スポット”として取り上げられユーチューバーらが相次いで侵入するなど、不法侵入があとをたたない。

廃ホテルの内部は、天井や壁などがいつ崩れ落ちてきてもおかしくない状況で、さらに人体に影響を及ぼすアスベストなどが飛散し非常に危険。

そのため日光市は、ホテルの立ち入りを禁止している。

解体費用に最大数十億円

“危険な廃ホテル”は、なぜ解体されないのだろうか。
そこに大きく立ちはだかっているのが費用の問題。最大数十億円という膨大な解体費用が掛かるというのだ。

日光市の担当者は、「当該建物の解体はかなり高額なため、市が主体となって実施することが難しい」と話す。

しかし、国が廃屋の解体費を補助する制度もあるが、上限となる1億円ではとても足りない。

世界遺産の“日光東照宮”がある日光市。
鬼怒川温泉の観光客は、コロナ禍以前に比べて75万人以上も減少している。
そんな温泉地に影を落としているのが廃ホテルだった。

日光市の担当者は、「地域住民が不安に思うような施設があるというのは、悲しいこと。そちらが解消されて多く人が喜んでいただける温泉地になりたいと思う」と話す。

日光市は、ホテルの所有者に適正な管理を求めるしかないのが実情だ。
(「イット!」3月28日放送より)