全国で感染者が相次ぐ「はしか」、福岡でも3年ぶりに確認された。強力な感染力を持つ「はしか」から身を守るためにはワクチン接種が有効だが、そのワクチンがいま不足しているという。福岡の現状を取材した。

「はしか」感染者が急増もワクチン不足
「はしか」感染者が急増もワクチン不足
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はしか患者が全国で急増

いま、全国で急増している「はしか」の感染者。福岡県内でも3月25日に今年初めて感染者が発表された。感染したのは福岡市内在住の30代の男性で、3月16日に発熱し、その後、体に発疹の症状も現れたことなどから検査をした結果、24日にはしかに感染していることがわかった。男性に海外渡航歴はなく、詳しい感染経路は分かっていない。

全国でもはしかの感染確認が相次ぎ、今年報告されているのはすでに30人を超えている。

福岡で今年初の「はしか」感染者発表
福岡で今年初の「はしか」感染者発表

強い感染力「インフルエンザの10倍」

はしかはどのような病気なのか。しんどう小児科(福岡市城南区)の進藤静生院長は「小さい子供の場合は命に関わるような、特に予防接種をしていない子供の場合は発熱、場合によってはけいれんを起こしたり、脳炎や脳症も引き起こす病気」と説明する。非常にまれだが、10~15年後に知能が落ちる合併症が起きることもあるという。

出典:国立感染症研究所
出典:国立感染症研究所

感染すると発熱やせき、鼻水といった風邪のような症状が2~4日続いたあと、39度以上の高熱や発疹が出るという。

そして、はしかの最大の特徴が「極めて強い感染力」。接触感染や飛沫感染だけでなく空気感染もするため、はしかの感染力は「インフルエンザの10倍」とも言われている。

「はしか」の感染経路は…
「はしか」の感染経路は…

感染から身を守るには「ワクチン接種」

感染から身を守るためにはどうしたらいいのか。進藤院長は「予防接種を受けること以外にはない」と断言する。はしかは1歳の時と「小学校入学前の1年」の2回、ワクチン接種をすれば95%以上の確率で免疫がつき、感染を防げるとされている。

しんどう小児科 進藤静生院長
しんどう小児科 進藤静生院長

ところが、取材班が街の人にワクチンの接種歴についてたずねてみると「予防接種とかワクチンとか全然覚えていない」(70代)、「受けたかな?」(15歳)、「覚えていない。たぶん受けたかなとは思うが、全然記憶にない」(20代)という声が続出。医師は、ワクチンを接種しているか分からない場合には母子手帳の記載や抗体検査で確認した上で、必要に応じて接種を勧めている。

街の人
街の人

ワクチン不足で懸念広がる

はしか感染から身を守るワクチン。だが、今そのワクチンの供給に懸念が生じているという。

福岡市の「せき小児科・アレルギー科クリニック」ではワクチンの入手に頭を抱えていた。関真人院長によると、2月末からワクチンの入荷が滞るようになり「一時的にネット上からの接種予約は中断して、電話で直接受けるようにしている」という。3月25日の取材時点でワクチン在庫はわずか数個。次に発注しても入荷できるかどうかが分からず、スムーズに予約を受けられない状況だ。

ワクチン不足の原因は製造メーカーの出荷停止。国内では3社が製造しているが、このうち1社が去年11月、予防効果が十分ではないワクチンの可能性があるとして出荷を停止したためだ。関院長は「ワクチンを打つ人が少なくなると集団としての免疫が落ちるので、海外から散発的に感染した人が入ってきて、広く流行しかねない」と話している。

せき小児科・アレルギー科クリニック 関真人院長
せき小児科・アレルギー科クリニック 関真人院長
テレビ西日本
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